第197号   愛命園だより「あゆみ」   令和4年10月

いよいよ避難棟着工
園長 前 和枝
 朝夕と寒くなり木々が色づき始める季節となりました。
 さてこの度は、安全祈願祭が無事終了し着工中の避難棟について書かせていただきます。避難棟の愛称は、園旗にも描かれている『さくらホール』といたしました。
 避難棟への思いは、平成30年7月西日本豪雨災害がきっかけでした。6月下旬より雨が降り続き台風7・8号の到来、梅雨前線の活発化により、いつやむかわからない豪雨となりました。湯来福祉会館へ利用者60名中43名が避難をしました。不安ではありましたが体調に不良をきたす方、移動することにリスクが伴う方には残っていただき、職員数人が対応のため園に残りました。避難所へ避難した方・残留した方、双方とも不安しかありませんでした。一夜を避難所で過ごし、翌日には川の水位が少しずつ下がり帰園となりました。
 昔の話になりますが、愛命園は昭和51年の水内川決壊により浸水被害を受けました。被災時、利用者のうちで帰省できない方は、近隣お寺での寝食だったようです。その後堤防の復旧・嵩上げ工事が完了し、半年後に利用者の生活は元通りとなりました。
 園舎改築後の平成16年にも、台風18号到来の為避難をしました。その時もグランド側廊下から浸水があり、大変だったことを思い出します。そんな愛命園の立地状況や、昨今の気象状況(線状降水帯による豪雨等)、また利用者の高齢・重度化を考えると何とかならないものかと頭を捻っていました。法人会長にも相談し、令和2年より設計会社の方との打ち合わせを重ね、避難棟実現へと進んでまいりました。
 そうして炎暑が続く中の令和4年7月28日、念願であった『愛命園避難棟新築工事安全祈願祭』を、八幡神社川口名誉宮司をお迎えし、宮崎康則県議会議員、法人の橘髙則行会長・金岡峰夫事務局長、大旗連合建築設計株式会社、施工者のプランニング三誠株式会社、そして愛命園が出席し滞りなく行うことが出来ました。
 これもひとえに、町内会長をはじめ地域の皆様、家族会畑後会長をはじめ家族の皆様、思いを理解して頂き設計に携わった大旗連合の山崎様をはじめ職員の皆様、賛同して頂いた法人会長をはじめ理事・評議員の皆様、そして利用者の皆様、愛命園職員の皆さん、多くの方々のご理解ご協力の元ここまで来ることができました。本当にありがとうございました。感謝いたします。
 今後は、月1回の新築工事定例会に参加しつつ、少しずつ出来上がる『さくらホール』を楽しみに過ごしてまいります。


新型コロナウィルス感染症クラスター化について
支援課長 髙橋 義彰
 令和4年8月~9月、愛命園内にて利用者14名、職員17名の新型コロナウィルスの感染が確認されました。1名の短期間の入院はありましたが、幸いにして重症化した方はいませんでした。それでも、利用者の皆さんの生活を大きく制限したことについて申し訳なく思います。
 対応について、想定を超えてその場で判断対応しなければならない状況も少なくなかったのですが、そんな中でも職員の献身的な対応があったからこそ、約20日間という短期間でクラスターを封じ込めることができたのだと感謝しています。職員も発生当初は混乱があったのですが、ある程度経過すると手順や何が必要か状況を把握して各所で対応してくれました。皆が献身的に勤めてくれたことにただただ頭が下がるばかりでした。
 振り返ると、個人的にはあの時、あのタイミングでもっと早く対応していれば感染者数を抑え込むことができたのかもしれないと思う場面がいくつかあります。初期の段階で早めに食い止めたかったのですが、非常に高い感染力に驚きました。
 今回、感染が拡大するにつれ、徐々に対応を強化する形になりました。例を挙げると『最初は食堂で数人で食事』から、『居室での食事』に変更するなど、結果的にそれは後手後手に回る手段だったのではないかと思います。感染拡大を防止するためには、初動で最大限の封じ込めることが重要であり、様子を見て順次強化するかたちでは結果として長期化するのだと感じました。また、物資や検査キットがギリギリで物品不足が心配な点もありましたが、適時調達していただけたことは助かりました。
 今回、比較的早期に収束できたポイントは愛命園の居室環境にあり、食事場面にあると考察します。もちろん各所の対応対策があってのことですが、まずは愛命園の居室が1~2人部屋であったこと、その環境で居室での食事に切り替えたことで、それ以降の新規感染はかなり抑え込むことができたように思います。それだけ個別の食事が感染防止に効果的であるのだと実感しました。
 感染対策担当の立場にありながら20名以上のクラスターを出してしまったことを大変申し訳なく思っています。それでも各々しんどい環境にありながら、たくさん温かい言葉をかけて頂きました。救われる思いでした。今回乗り越えられた経験はとても貴重であり、コロナ対応に限らず今後に生かしていきたいと思います。ありがとうございました。



クラスター発生時の園内の雰囲気
生活支援員 山根 一洋
 集団生活の場ということもあり、新型コロナウィルスのクラスターが発生した場合、利用者の皆さんに居室でずっと過ごしていただくことや、活動や生活場面での我慢をお願いすることなど、上手く説明し協力を得ることができるのか?新型コロナの感染が全国的に広がって以来の課題でした。
 コロナ禍3年目にして園内でクラスター発生し、新型コロナウィルスが現実のものになった時、職員の慌ただしさや、今までの感染症とは違う園内の異常な分雰囲気を察したのか、ほとんどの利用者が職員に協力し居室での待機に応じてくださいました。
 また職員が配膳や検温で訪室する際に、マスクをつけて感染対策を行ってくれる方も多くいらっしゃいました。
 1か月近くのコロナ対応でしたが、利用者の皆さんの協力により乗り越えられたのだと感じました。


避難
事務員 林 洋輔
 9月19日、台風14号が広島県の北を通過しました。前日の夜半から雨が降り続き、朝8時には水内川の水位もずいぶん高くなっていました。その時点で台風の最接近はまだ先、13時頃までは強い雨が続くという予想でした。
8時15分、消防署からマイクロバスを手配しているとの連絡があり、避難所である湯来福祉会館へ避難することとなりました。各所に連絡を取り、近隣の職員を招集、避難の準備を進めました。
 8時50分、利用者の移送を始めようというタイミングで、消防隊員、消防団の方々が到着され、マイクロバスも活用しての避難が始まりました。コロナ対応ということでマイクロバスに乗れるのは一度に10名程度、園の公用車は車いす対応のもの2台とミニバンタイプ1台を使って避難を進めました。最後の利用者が園を出発されたのが10時10分でした。

 避難先では、愛命園の利用者と職員だけの別棟を開けてくださり、不特定の方との接触がない状況で過ごすことができました。昼食は、富士産業株式会社調理員の方々の協力で通常のメニューを配送できる形で準備していただき、避難先でも暖かい食事を摂ることができました。
 その後、雨の予測と川の水位の動きから状況が落ち着いたと判断し、13時30分帰園を開始しました。
 数日前までコロナ対応をしていたこともあり感染の再拡大を懸念しておりましたが、幸いそのようなこともなく、また体調不良を訴える利用者もおらず、これをもって無事に台風を乗り越えられたということになるかと思います。
 避難を手伝っていただいた佐伯消防署と地元消防団の皆様、急な変更に対応していただいた富士産業株式会社調理員の皆様、改めてありがとうございました。


夏まつり
生活支援員 𠮷本 結子
 新型コロナウィルスも今だ影を潜めてくれない中、愛命園では8月6日に『夏まつり』を開催いたしました。コロナ禍でイベントが減っており、通常通りにはできないが、それでも利用者に楽しんでもらえるものをという想いで検討を重ねました。
 そこで今年は、広島で活躍されている落語家『ジャンボ衣笠さん』をお招きすることにしました。感染予防の徹底ということで、到着後すぐにコロナの抗原検査を受けていただき、ステージと利用者の距離も大きくとりました。いざお話が始まると、利用者の顔が笑顔になっていました。私自身もですが、生で落語を聞くという体験は多くの利用者さんも初めてだったのではないかと思います。
 祭りの楽しさはやはり屋台で色々食べること。音を感じること。匂いを感じること。それを実現できるよう、今年はたこ焼きと二重焼きを、実際に鉄板で焼いて提供しました。暑い中、担当職員は外で汗を流しながら焼きました。それを食べていらした利用者さんの顔は、美味しいと楽しいが一緒になった笑顔でした。来年こそは通常の夏まつりが出来るような環境になって欲しいものです。
 利用者さんの笑顔に支えられ、準備から当日まで汗を流した実行委員のみなさんのおかげで夏まつり行事を終えることができ感謝です。ありがとうございました。


ご長寿お祝い会
生活支援員 上 正輝
 今年度は9月6日にご長寿お祝い会を予定していましたが、園内でコロナのクラスターが発生したため延期になりました。イベントとしてはできなかったものの、昼食では特別メニューを提供し、おやつとして紅白饅頭を楽しんでいただきました。
 そして、改めて10月4日にご長寿お祝い会を行いました。クラスター発生を受けてレクリエーションは中止し、賀寿の方に職員の手作りの写真入れとお菓子をお渡ししました。
 来年度も皆さんと元気にご長寿会を行えるように願っています。


旅行
生活支援員 椋田 聖子
 令和4年度の利用者旅行は、全国的なコロナウィルス感染者の増加や園内のクラスター発生と重なり、当初の予定より1ヵ月延期しての実施となりました。園内でクラスターが発生した際には皆無事に回復できるのか、いつ終息するのか等不安で仕方ありませんでしたが、幸い3週間程度で皆回復され、10月6日からスタートすることができました。利用者、職員ともに一つの困難を乗り越え、何より皆が大事に至らず元気で実施までたどり着くことができたことに、感無量です。
 近年の利用者旅行は、コロナ禍での自粛により遠出は控え近場のみでの実施でしたが、今年は福山まで行先の範囲を広げることになりました。福山へは小型の観光バスで、鴎風亭というホテルへ食事に行きます。ドライブ途中、休憩と土産購入を兼ねてサービスエリアや道の駅へも立ち寄ります。
 体力的に遠出が負担になる方には近場のコースも計画しました。利用者さんは買い物、食事がお好きな方が多い為、そういった要望に沿えるよう、近場コースは利用者さんのしたいことを重視して計画しました。内容は安芸グランドホテルで食事、空口ママのみるく工房orいろはビレッジでスイーツを味わう、サンリブor廿日市ゆめタウンで買い物の5コースです。この中から、ご自身の体力や希望に合ったコースを選んで頂く形をとりました。近距離であってもご本人のしたいことが実現することや、外の空気を吸って外出の楽しい雰囲気を味わうこと等で、皆さんとてもキラキラした顔をされます。
 また、どちらのコースも実施するにあたり、マスク着用と手洗い消毒をはじめ、屋内での飲食は個室を貸し切れる場所に限定するという取り決めをしました。全国的な大流行は落ち着いたものの、外に出れば感染の脅威と隣合わせでもありますので、しっかりと感染予防をしながら思い切り楽しんでリフレッシュしてきて頂きたいと思います。


家族会より
会長 畑後 克二
 園で初めてコロナ感染が発生したと聞き大変心配しましたが、何とか収まって本当に良かったと思います。でも、これからも油断できません。今後、コロナ感染がないことを願います。
 今年の夏は例年にない猛暑で、西日本は1956年以来の暑さだったそうです。これからは、毎年夏が5か月近い長さになって本当にたまりませんね。
 4か月前に私が近くの公園を散歩していると、カギが落ちているのを見つけました。マンションの管理人さんに預けたところ、別のマンションに住んでいる方のお子さんが落としていて、無事に持ち主に届いたと翌日わかりました。親御さんは心配して怒っておられたようですが、ともかくあってよかったと思いました。小さな善意が届いたようでうれしかったです。これからも気を付けていきたいと思うところです。


~木漏れ日~リレー随想
生活支援員 𠮷本 結子
 我が家には2匹の猫がいます。毎日昼間は家から出ないようにして、留守番をさせています。最初は1匹だけ飼っていたのですが、5年経った頃に昼間1匹では寂しいだろうと、縁あって子猫を引き取る事となりました。私としては1匹より2匹のほうが、遊び相手になっていいかな…と思っていたのですが、猫からしたら余計なお世話だったみたいで、一緒に生活始めて6年が経とうとしていますが、後から来た猫は近寄ろうとするけど、先住猫は「しゃー」といい、まったく仲良くなれません。でも夜になると私の布団に2匹ともやってきて一緒に寝ることが、今の私の癒しとなっています。子供達が巣立った今、猫2匹が私の子供です。


寄せられた善意
       令和4年7月21日~
          令和4年10月24日
           (順不同・敬称略)
《現  金》
妙安寺      大成 敏正
森井旅館     林 弘子
橘髙 則行    山下 和義
前田 秀昭

《現  物》
菓子、飲料、リンゴ
 谷川 隆子
ファインステップ  岡野 勝正
野菜、飲料     高野 正明
米         和田 靖幸
梨         則末 伸夫
梨         大倉 省三
梨         亀井 里之
防護マスク、飲料  大崎 香織
野菜        梶原 繁子
米         新田 嘉弘
テーブルクロス   岡本 悦子
米         坂口クリーニング店
米         前田 秀昭

《朗読奉仕》
どんぐり会

《読み聞かせボランティア》
新庄 久美子

※ いつも暖かいご支援ありがとうございます。諸般の事情で掲載を控えさせていただく場合もあります。



園まつり中止のお知らせ
 例年、11月23日(勤労感謝の日)に開催しておりました「愛命園園まつり」ですが、新型コロナウィルスの感染症状況を鑑み、昨年、一昨年に続いて中止とさせていただきます。皆様ご理解いただきますようお願い申し上げます。


編集後記
 昨年、あまりにおいを感じないと書いた愛命園の金木犀ですが、今年は濃厚な甘い香りをあたり一面に漂わせていました。
 グランドでは、避難棟の工事が進んでいます。完成後はどのような風景になっているのでしょうか。(HY)