第184号   愛命園だより「あゆみ」   令和1年7月


ご挨拶
社会福祉法人       
広島県視覚障害者団体連合会
副会長 花田 敏文
 このたび、広島県視覚障害者団体連合会の副会長に選任されました花田敏文と申します。みなさんどうぞよろしくお願いします。
 自己紹介をしますと、三次市在住の58才です。40才ころ網膜色素変性症による視野欠損が始まり、それまで勤めていた電子部品の会社を辞めました。求職活動が数年続きましたが、障害者福祉の仕事に就いていつの間にか10年が過ぎています。職場では障害をお持ちの方の相談やお困りごとを一緒に改善することが主ですが、同僚の目を借りる場面もしばしばです。
 さて、視覚障害者団体連合会の理事になったのが10年ほど前です。なかなか行事にも参加することができず知らないことが多いとは思いますが、連合会が目指す「視覚障害者福祉の向上」のために、努力したいと考えております。
 なにぶん微力ではありますが、みなさまのアドバイスを頂きながら努めて参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。



家族会より
息子と共に
家族会 合田 芳恵
 歳のせいでしょうか?こどもたちの小さかった頃の事を、思い出す事が多くなりました。
 そう、あれは息子の出産直後、看護婦さんが「きれいな赤ちゃんですよ」と私の元に連れて来てくれた息子は、本当に輝くような穏やかな微笑みを浮かべていました。まるで仏様のようなそんな息子を、昨日のように思い出される光景です。
 しかし、生まれて1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、と月日が経つ頃、息子の身に、何かおかしいと母親の直感のようなものでしょう、毎日のように小児科へ行っては、先生に訴えていたのですが、見た目にはとても機嫌の良い子だったので、先生も「成長は個人差がありますので…」と、納得できないまま、とうとう確信を持って10ヶ月の時総合病院へ。そして、診てもらったその日に入院となりました。
 息子にとって堪え難い日々の始まりとなり、二才までに、二度の手術を経験することとなりました。片道1時間の道のりを、2才になった息子を背負い自転車でリハビリに通う毎日を送り、息子の頑張りもあり5才の時、装具を付けて初めて歩く事ができるようになりました。一度は断られた地域の小学校に入学が決まり、息子もピカピカの一年生となったのです。
 今でも鮮明に思い出すのは、初めての運動会の日の事です。かけっこのみに参加させてもらった息子は、もうにこにこで他の友だちと共にスタートしたのです。友だちはすでにゴールしていた時、息子はまだ半分にも達しておらず、それでも本人は顔を真っ赤にし、右へヨロヨロ、左へヨロヨロとしながら真直ぐゴールに向かっておりました。ふと父兄の声が「あの子の親はどんな思いで見てるんじゃろうね」と聞こえて来たのです。「はい、あの子の親はここにいますよ。嗚咽が止まらない位感動の声援を送ってますよ」「ガンバレ、ガンバレ」の声援と、ゴールを縮めて下さった先生のお陰で、転ぶこともなく、満面の笑顔でゴールのテープを切った息子の顔、私は忘れません。決して忘れる事のない顔となりました。
 親の人生に翻ろうされながらも、既に息子も40を過ぎた立派な大人となりました。この5月の事です。一泊だけの外泊を楽しんだ息子が愛命園に帰った時のこと、ふと安堵の表情を見せたのです。その時、私は心の底から「あー、良かったね、あなたの居場所が出来たんだね。あなたの居場所はここなんだね。もうお母さんは『あなたより、1日長く生かせて下さい』と神様に願わなくていいんだね、ありがとう、良かったね」と思った瞬間でした。
 あの仏様のように輝いていた赤ちゃんが、今は、頭の輝きが増して来た息子を横目に、クスッと笑ってしまうこの頃です。息子よ、愛命園の皆様に可愛がってもらい笑顔で生きて行って下さい。母も命ある限り、心はあなたの側にいますよ。
 最後に愛命園の皆様、本当にありがとうございます。・・・。心より感謝を込めて。



グループ外出
生活支援員 上 正輝
 今年度のグループ外出は、5月16日から毎週木曜日、8回に分けて実施する計画でスタートしました。
 今年度の回転寿司コースは、毎年利用していたおんまく寿司からくら寿司に変更になりましたが、お店の雰囲気も良く皆さん喜ばれていました。ゆめタウン廿日市のコースでは、皆さん思い思いに買物や食事を楽しんでおられました。
 5月30日のゆめタウンの後から、愛命園内で夏風邪が流行ってしまい、3グループが7月に延期になりました。
 夏風邪も落ち着いた6月27日からグループ外出が再開し、ほの湯コースでは入浴と買物を楽しまれました。いろはヴィレッジのコースは、車椅子の利用者が中心でした。愛命園で昼食をとってから出発、当日は天気が良く、いろはヴィレッジの外のテラス席で焼き立てのもみじ饅頭やジェラート等を食べ、ゆっくりと過ごされました。その後の買物も楽しまれたようでした。



障害者相談支援事業所愛命園について
相談支援専門員 沖田 幸久
 愛命園は障害者の支援施設ですが、施設の業務以外に地域の福祉資源として障害者相談支援事業所の機能も併せ持っています。私が相談支援専門員という立場で仕事をするようになって5年が経過しました。思い返せばあっという間です。今回それを振り返り、使い古された感のある言い方ですが平成から令和にかけての5年間の変化についてお話ししたいと思います。
 まず相談支援専門員とは何かですが、例えば高齢者で介護を必要とする方は生活の支援について「ケアマネージャー」に相談します。細かい違いはありますが、障害者を対象とした相談相手が相談支援専門員です。「障害者版ケアマネージャー」と思っていただければ理解が早いかと思います。ちなみにケアマネージャーの正式名称は「介護支援専門員」です。「相談支援専門員」とよく似ていますね。
 障害のある方が地域で暮らそうとすると、以前は家族の支援が不可欠で、それが出来無くなれば施設入所という流れも一般的でした。社会の状況も変わり、独居で家族の支援を受けずに暮らそうとされる方も増えました。そしてそれを支える公的サービスも作られました。具体的には身体介護や家事援助、移動支援などの福祉サービスです。その仕組みは少し複雑なので障害の当事者だけで手続き等するには荷が重いのが現状です。当事者の方からお話を聞き、サービスを立案し、それぞれのサービスを実施する事業所(ヘルパーの運営会社等)を束ね、総合的に連絡調整する役が相談支援専門員です。
 さて、5年前からの変化ですが、一番大きなのは報酬体系の変化でしょう。今年四月から、モニタリングの標準回数が増えて対象者一人に対する報酬は倍増します。長く愛命園の赤字部門だった相談支援事業ですが、次年度より脱却できる目途が立ちました。相談員はその分利用者と会う回数と役所に出す書類が増えて忙しくなるのですが、報酬の低さにあえぐ多くの事業所にとって朗報です。これを機に、これまで相談支援の開始を躊躇していた事業所が新たに始めることになった等の変化が出ています。さらにさまざまな加算項目も追加されています。しっかり働く相談員に報酬増で応える国の姿勢は評価できますが、加算についてはうまく請求できた事業所とそうでない所の差が生まれる懸念も生じました。
 次の変化は精神障害の対象者が減少したことです。当初は3障害(身体、知的、精神)全てを相談支援の受け入れ対象としていましたので、5人の精神障害者を担当していました。愛命園は精神障害に対する専門性が低いにも関わらず、無理に対応していた面もあり心的負担を感じていました。他の相談支援事業所と連携し5年の間にほとんどの方を専門の事業所に引き継ぐことができ、現在は精神障害を対象から外しています。結果として視覚障害者を対象とする率が90%以上にまで上がりました。視覚障害リハビリテーションや同行援護の知識もあり、困った時のショートステイ利用も容易なことから広島市内で最も視覚障害に特化した相談支援事業所になったと言えます。
 最後にもう一つ、これはこれからの変化となりますが、これまで相談員は一人での対応でしたが、今年度中にもう一人養成の研修に出る予定で、秋からは相談支援専門員2名体制となります。これにより特定事業所加算の対象事業所となります。
 相談支援専門員は在宅で暮らす対象者と面談し、一緒に状態改善に向けた計画作りをすることが主な業務です。そして相談者の悩みや問題が解決した時には大きな喜びも感じます。相談の業務をするようになって園の入所者と接する機会はとても少なくなってしまいました。少し寂しい気もしますが、私はこの仕事をとても気に入っていて、やりがいを強く感じています。私に与えられた天職だとも思っています。仕事に対してこんな風に思えることはとても幸せな事ですよね。



医務室だより
看護師 松永 千和
 愛命園に入所されている利用者さんの平均年齢は65歳。長寿大国日本において65歳といえば、平均的にはまだ若いと感じられる年齢かもしれません。
 利用者さんの毎日は、起床から就寝まで実に規則正しく、朝・昼・夕と3食バランスの良い栄養満点の食事を摂り、もちろん暴飲暴食することもなく、私自身見習いたいほど健康的に過ごしておられます。
 しかし最近では、そんな利用者さんの急速な体力の衰えに直面しています。
 持病があり、薬を常用されている方は9割以上、その中には複数の医療機関にかかっている方もたくさんおられます。そのため、医務室では病院への通院業務が日常となっており、月の通院者数は延べ100名、通院・往診・薬の受け取りは週に10〜15件という数になります。転倒による骨折、感冒による肺炎の併発、持病の悪化等で、突発的な通院や、入院に至るケースも少なくありません。
 通院は、車で片道30分〜1時間、通院先での対応も多岐にわたります。利用者さんを連れての通院業務は、携わる職員にとっても大きな負担であると感じます。けれど、ただ利用者さんの健康を願い、その痛み・苦しみを早く和らげてあげたいという一心で、私たちは今日もハンドルを握ります。
 そして、加齢や病後でADL(日常生活動作)の低下した利用者さんの機能訓練も、理学療法士によって週5日行われています。需要は増えるばかり。短期間で大きな変化がでるものではありませんが、毎日コツコツと行ってもらっているからこそ今が維持されているのだと思います。
 利用者さんの多くは、その障害により身体の不調を上手く伝えることができません。離れて暮らすご家族のご心配はいかばかりでしょうか。身近にいる私たちは、そんなご家族の気持ちになって、僅かな体調の変化にも早く気付くことができるよう、一緒に過ごす時間と日々のかかわりを大切に、『大切に』していきたいと思っています。
 利用者さんとの他愛のない会話は楽しく、笑顔はキラキラしていて、とても素敵で大好きです。私自身すごく元気をもらっています。
 皆さんの今ある健康を少しでも長く維持しながら、穏やかに、そして緩やかに老いていけるよう、微力ではありますが、日々傍らで寄り添っていけたら…と思っています。



ふれあい活動スタート!
生活支援員 益成 純也
 本年度はいろんな初めてがてんこ盛りです。世間では、平成から令和へと元号が変わり、愛命園でも職員の立場や業務が大きく変わりました。その中でも新たに新設された「ふれあい活動」についてご紹介します。

 ふれあい活動では、散歩、遊泳、日光浴、工作、挽きたてコーヒー、手浴、足浴、カラオケ、誕生日会等、それぞれの利用者さんにあった様々な余暇活動や運動を提供するためできました。今回はそのうちの一つ「車いす買い物」について説明させていただきます。
 近年、利用者さんの高齢化が進み、車いすを利用される方がより一層増えてきました。今では入所者のおよそ4割が、何らかの理由で車いすを使用されている状況です。みんなで一緒に行っていた普段の買い物への参加が難しくなっている方もいます。そんな方たちにも他の皆さんと同じように買い物を楽しんでもらうため、この活動ができました。車いすのまま乗り降りのできる車で最寄りのスーパーへ行き、それぞれが好きな物を買います。アイスクリームやコーヒーをその場で買って食べたり飲んだり、また、日用品や雑貨を買う等、各自で自由に満喫されています。中には「たこ焼き食べて熱くておいしかったよー」と言われた方もいました。利用者さん本人から嬉しかったという感想を聞けることは、私たち職員にとっても嬉しいことです。
 現在、車いす買い物に参加されている利用者さんは12名。今後もこういった支援が必要になる方も増えてくることと思われますが、私たち職員で可能な限り、どんな状態であっても日常生活を楽しんでもらえるよう支援していきたいと思っています。



七夕
非常勤生活支援員 南原 裕美子
 令和になって最初の七夕です。林弘子前園長宅の竹を頂き、利用者と職員がひとりひとり短冊に願い事を書いて飾りました。七夕の歌も歌って、楽しい時間を過ごしました。
 昼の給食も七夕メニューで、七色に盛りつけられた具だくさんのそうめんのほかに星形のハンバーグもあり、とてもおいしいと好評でした。富士産業のスタッフの皆さん、毎日おいしい給食をありがとうございます。
 飾りつけをしているとき、ある一枚の短冊の願い事が目にとまりました。それには、野球観戦の後お好み焼きを食べて帰りたいと書いてありました。なぜか、ほんわか、ふぁとした気分になりました。
近年では、雨の量も多く、豪雨災害も発生しています。もうこれ以上災害のない令和でありますようにと願わずにはいられません。
星に願いを込めて…



木漏れ日
リレー随想
生活支援員 神村 恒彦
 人の名前がすぐ出てこない。しばらくたって思い出す。何事も覚えがわるくなり、忘れやすくなってきた。朝起きても疲れが残る。このように書いていると我ながら情けなくなってきます。このままではいけないと思いあれこれ考えてはいるのですが、積極性と根気のないのは生まれつきで今日まできてしまいました。ただ、人生の節目を迎え、今までの自分とは違ったことを見いだすため思索中です。
 ところで、あなたの趣味、特技は何ですかと聞かれ、すぐ指を何本か折れる方も多いでしょうし、片手では足りない人もいるでしょう。これといった趣味や特技のない私にはうらやましい気持ちもありますが、思うだけでは進歩がないので、先ず体力低下は下半身からと言いますから、下半身、体幹を鍛え持久力、瞬発力をつけたいと考えています。
 頭の方はどうかといいますと、これがなかなか難しい面があります。息子たちが使っていた教科書を引っ張り出し挑戦してみると、理解できないことが沢山あり、同じところの繰り返しですが何か新鮮に感じます。それと、あたりまえのようですが本を数多く読み知識を吸収し、感動するということが大切なのではないでしょうか。そうそう、なるべく多くの人と接する機会を持つということを忘れないようにしなければいけませんね。
 脈絡のない文章になりましたが、心身ともに健康で過ごすためにも是非実行に移したい思いが強くあります。何はともあれ明るく、元気に前向き、前向き。


寄せられた善意
       平成31年4月24日〜
            令和元年7月24日
            (順不同・敬称略)
《現  金》
浅野 一男      大成 敏正
森井旅館
付添看護共済事業愛命園支部

《現  物》
お茶         則末 伸夫
玉ねぎ、にんにく   長峯 公明
菓子、ゆでカボチャ、そうめん
       谷川 隆子
花(開園記念日)   富士産業株式会社
               中国事業部
折り紙作品      羽柴 良枝
  〃        小田 征米子
エタノール綿     畑後 克二
きゅうり       永尾 トシコ
 〃         上 正輝
ズッキーニ      永尾 高芳
キャベツ、トマト、石鹸
           山本 慣登
青じそ        梅田 大作
なす         新田 嘉弘

《清掃奉仕》
湯来地区民生委員・児童委員

《朗読奉仕》
どんぐり会

《読み聞かせボランティア》
新庄 久美子

《将棋ボランティア》
上野 俊雄

※ いつも暖かいご支援ありがとうございます。諸般の事情で掲載を控えさせていただく場合もあります。



人の動き
《退  所》
7月18日付  木村 雪美


編集後記
 今年は梅雨らしい天候が続きました。降ったり止んだりの日が多く、一日中晴れた日がほとんどなかった印象です。その分気温はほどほどで、過ごしやすさはありました。
 梅雨明けももうすぐでしょう。レンガ通りの桜の木から、セミの鳴き声が響いています。この声を聞いていると、気分は完全に夏です。(HY)