第167号   愛命園だより「あゆみ」   平成27年5月


「変化」

サービス管理責任者 煖エ 義彰

 愛命園も今年で42周年を迎えます。私は愛命園と同い年ですので、若いつもりでしたが、最近はお腹のあたりが気になってきました。利用者の皆さんについても平均年齢が62歳を超えて、体調面などいろいろ心配ごとも耐えません。年月とともに園の様子も少しずつ変わってきたと感じています。特にここ数年は利用者・職員とも入れ替わりがあって、訪れる人達からは「ずいぶん顔ぶれが変わったなぁ」との言葉が聞こえてきます。職員数も大幅に増えて年齢層も若返ったことで活気ある職場になっています。一方で技術面や細かな変化への気配りなどまだまだ未熟な場面もありますが、私自身もいろいろな人たちの言動や視点から、これまで当たり前に行ってきた仕事が、実は「当たり前でない」と感じることも多くあります。
 今年4月の統一地方選挙では、園内で投票が行えるよう不在者投票を愛命園会議室にて実施しました。これは園長より「選挙は利用者の権利であり、できるだけ多くの方が投票できるように」との思いにより実現することができました。これまで投票に出かけていた利用者が1人か2人だったのに対し、今回園内での不在者投票が実現したおかげで投票者は約20人近くに増えました。この背景には、慣れない場所での移動や初対面の方の説明、求められる意思表示等の負担など、そうした一面があったのかもしれません。ですから今回の不在者投票はとても有効なことであったかと思いますし、改めて日々の支援の在り方について、「常にこれで良いのだろうか」という疑問を持って携わっていく必要があるのだと勉強になりました。
 また今年度から日課に全体歩行を組み入れています。朝礼後の30分間、廊下をみんなで歩くのです。利用者の高齢化に伴って運動量の低下が懸念され、少しでも健康維持にと働きかけています。最初は日課を変更することから、拒まれる利用者も少なくありませんでしたが、慣れていくにつれ、歩行を楽しみに待っていてくださる方も出てきました。歩行といってもただ単に歩くだけでなく、職員や利用者が入り混じりいろいろな声を掛け合い、話をしながら歩きますので、コミュニケーションの場面としても有意義な時間だと感じています。
 私は「変化」というのは、その時の状況に合わせて対応し進化するために必要なことだと思っています。時代の流れや制度政策の動きから、個々の精神的な揺れ動きまで、柔軟で細やかな対応が大切だと考えます。
 現在、愛命園では微妙に異なる日勤が10通りあります。さらに早出は8通り、遅出も10通りあります。すべての勤務形態を合計すると約30通りの勤務形態となります。その理由は、ひとえに利用者の多様なニーズに対応するためであり、より良い形態を模索し細分化しました。細分化すれば業務は細かくなり煩雑にもなります。ですが福祉の仕事は効率化だけでは語れないことも多々あり、一見無駄なようなことがとても大事なことであったのだと感じることがあります。必要なのは、柔軟に変化させつつ見た目や形は変わっても、変えてはいけない中身は大切に持ちつづけること。変化にこだわり「中身」を忘れてはいけませんし、変化することを拒んでいてはいずれ無理がきてしてしまいます。私はこれまで諸先輩方から教えていただいた大切なことを自分なりに噛み砕いて、ゆっくりと次の世代の人たちに受け継いでいきたいと考えています。愛命園が今後もより良い場所であるよう、情熱と誠意を持って勤めていきたいと思います。今後ともよろしくご指導ください。



先輩

家族会会長 藤正坂二
 私は1934年、10人兄弟の7男としてこの世に生を受け、1949年まで学校というところには行かせてもらえず家で遊んでいました。満15歳の春、小学校5年生に入れてもらって学校を経験し、以後10年寄宿舎から学校に通いました。
 学校に入ったとき同級生は二人、二つ年上のその同級生から一番に教わったことはこうでした。「あのねえ、盲学校では一級でも上級生に対しては、年は下でもさん付けで呼ばにゃあいけんよ。それから、担任の先生と寮母先生の名前はしっかり憶えにゃあいけんよ」「はい、わかりました」(当時の寄宿舎には、軍隊で弾に当たって失明した人や実社会を経験した人も数名おられました)
 卒業後半世紀余、毎日諸先輩との出会いと教わる事ばかりでした。
 さて、八十路を過ぎたというのにまた不思議な先輩が現れました。そうです、親子ほども年下のまさしく親子が先輩顔をして、私より先にあの世に行った上級生。愛命園での存命中、担当の職員さんの泊まりの夜は必ず電話がかかってきて楽しみました(何年も)。
(裕美子)「ああいうことをしてはいけません。それはだめです。それはいいです」
(私)「はいはいわかった」
(裕美子)「はいは1回です」
(私)「はいわかりました。気を付けます」
 この頃では、起きるにつけ寝るにつけまさに先輩顔をしおって、偉そうに。よう教えられます。しかしです、なんぼええ先輩でもただちにおんぶにだっこ。すぐついて行きたいとは思えないのは、まだ業をしっかり持ち合わせているからでしょう。
 長くなりました。話変わって私こと皆様方には長い間大変お世話になりました。陰に陽にご指導ご鞭撻をいただき、支えていただいたおかげで今日を迎えさせてもらったと心から感謝申し上げますとともに、今後『愛命園』そして『家族会』の弥栄(いやさか)をお祈り申し上げます。本当にありがとうございました。


十七回忌法要いとなまれる

園長 林 弘子
 3月26日、愛命園のホールには心静かに開式を待つ仏事の曲が流れ、やがて11時を迎えました。
 昭和48年6月1日、愛命園開園の日に第1号で入所されたTさんが亡くなられて満16年、今日は十七回忌法要です。
 この法要をとり行うにあたって事前に数えてみましたら、利用者はまだ37名の方がTさんと同時代におられましたが、職員になると58名中Tさんを知っているのはわずか8名ということがわかって仰天、「誰か知らない人の法要」にならないように大急ぎで「あゆみ」104号(平成11年4月発行)を取り出し、当時指導員だった長峯さんと、事務長だった私の二人のTさんを偲ぶ記事を印刷して配りました。
 Tさんは家族に縁がうすく、ずっと病院に入っておられました。「愛命園ができたのでお連れしました。布団や洗面用具を買い揃えながら来ました」これは付添いの福祉事務所の方の言葉です。
 温厚で、誰からも好かれ、神楽クラブでは八岐大蛇(やまたのおろち)のおじいさん役がよく似合って、今は亡きおばあさん役のNさんとの息もぴったりでした。
 重い病気にかかり、日赤に入院中、平成11年に亡くなられました。
 遺骨の引き取り手がなく、長い間近くの妙安寺さまに預かっていただいておりましたが、愛命園の敷地の西の端に納骨堂(お墓)を建立し、七回忌法要の時に納骨しました。
 平成23年の十三回忌法要に続く今回の十七回忌法要には、こちらからお願いして妙安寺の坊守さまにお勤めしていただきました。これは、先般退職された職員の方からご本尊さまの絵姿のご寄付がありました折、入仏法要のお勤めをしていただいたのが坊守さまで、法話はわかりやすく、そのあととても親しく利用者と会話して下さったのが心に残っており、特にお願いしたのです。当日も思ったとおりでした。ある女性利用者さん、前日まで「Tさんはいいんだけど、行ったらお経があるから行かん。お経は好かん」と拒否しておられましたが、担当職員の熱い誘いに、当日やって来られました。翌日お部屋を訪ねると、「やっぱりお経は好かんかったが、お話がよかった。男のお坊さんかと思っていたが、女の人で良かった。行ってよかった」
 みんなにわかりやすいお話をしていただいて、本当に良かったです。その日、その場にいる人に理解できてはじめて法話はありがたいのです。
 この日は、愛命園でほぼ37年暮らされ、療養生活ののち、今年1月14日に52歳で亡くなられた家族会会長さんの娘さんの分骨も、ご遺族の意向により、合わせてとり行いました。
 墓前には、お二人が生前お好きだったお酒やみかんなどが供えられ、読経の中、在りし日のお二人を偲びました。



お花見

生活支援員 宮木 明美
 今年の桜は、3月初めは気温の低い日が続き、花見に桜が咲くかと心配していましたが、下旬には一気に気温が上がりあっという間に満開に。
 しかし、喜ぶ暇もなく4月の嵐であっという間に散ってしまいました、当日は気温も低かった為、食堂とホールのパーテーションを開放し園内での花見となりました。
 担当としては、来賓の方々や利用者さんに綺麗な桜を楽しんでもらいたかったので、残念でしたが、春の嵐のお陰でと言うのもおかしな話ですが、いつもは見られないレンガ通りに桜の花びらの絨毯が広がり皆さんを癒してくれたのではないかと思います。
当日は本部から前川会長、大原副会長、後藤事務局長、渡辺清恵さん、利用者さんも全員参加され和やかな雰囲気の中、新  人職員の紹介が有り、ういういしさに3年前の自分をつい思い出してしまいました。
 食堂では、美味しいお弁当とお酒と利用者のカラオケで盛り上り外の肌寒さを忘れる程盛り上り、とても楽しい1日となりました。



第1支援活動報告

生活支援員 椋田 聖子
 昨年に引き続き、1係を担当させていただいている椋田聖子です。昨年の活動を振り返ると、一年目ということもあり初めてのことだらけで緊張に新鮮さに反省とたくさんの思いが溢れます。担当させていただいた誕生会では、先輩のフォローやアドバイスをいただきながら、誕生日という利用者さんの節目を一緒にお祝いさせていただきました。たくさんの利用者さんの笑顔が見られたり、おいしいとケーキをパクパク食べられる姿に私までハッピーな気持ちになったことが印象深く思い出されます。
 また、畑については芋を掘った経験くらいしかなく、育っていく行程に関わる機会はほぼありませんでした。実際に関わることで、今まで当たり前に食べていた野菜にはこんなに手間暇がかかっていたんだと感慨深い思いに包まれました。同時に、皆で育てた苗がどんどん成長する喜びと楽しさ、感動も味わいました。
 昨年はたくさんフォローしていただいた1年だったので、今年は昨年学んだことを活かしつつ自ら新しい提案もしていけるよう頑張ります。今年もみんなでより多くの喜びや楽しみ感動を味わい、共有していきたいと思っています。よろしくお願いします。



木漏れ日
〜リレー随想
祝入学

生活支援員 熹ゥ 瑞枝
 次女が4月8日に湯来西小学校に入学しました。
 新入生は…2人!全学年合わせて12人です。
 同じ湯来町内でもびっくりされるけど、湯来以外の人に人数を聞かれ、12人と言うと、ほとんどの人が「えー!1年生たったの12人!?」と言われます。「いや、全学年で・・・」
 確かにそのリアクションは正しいです。
 私も湯来へ来た時同じリアクションでした(笑)でも少ない人数だからこそ、解かるまで勉強教えてもらえるし、のびのびと過ごす事が出来る!子供たちにとってはとても良い学校です。これからの成長を楽しみにしている母でした。



現在、視覚障害者のために「あゆみ」の音声版(カセット、CD)は同じ法人が運営している施設広島県立視覚障害者情報センターのボランティアさんに製作していただいています。

感  謝  状

広島県立視覚障害者情報センター
並びに音訳ボランティア 様

貴団体は、愛命園広報紙「あゆみ」を、読み等下調べ・音訳・校正・修正と多くの時間を経て、CD(デイジー)製作に多大なるご協力をいただいております
ここに「あゆみ」を通して感謝の意を表します

障害者支援施設 愛命園
園 長  林 弘子
あゆみ編集委員会



【寄せられた善意】
[平成27年1月26日〜平成27年5月15日]
(順不同・敬称略)
《現  金》
愛命園育成会     藤正 坂二
新庄 務       株式会社ビッグラン
谷川 隆子      妙安寺
清水 都美子     大成 敏正
渡辺 清恵      後藤 幸生
大原 佳子      前川 昭夫
浅野 一男
付添看護共済事業愛命園支部
明法寺讃美仏教婦人会
湯来地区民生委員児童委員協議会

(園まつり)
平岡衣料品店

《現  物》
湯来の民話絵本4冊
  広島市立佐伯区図書館湯来河野閲覧室

電動ベッド、マット、紙おむつ
 佐々木 博好
電動ベッド、車いす 藤正 坂二
みかん       橋川 誠
啓翁桜       新庄 敏之
朗読カセット    廿日市音訳ボランティア
麺         湯来ふるさとプロジェクト
タオル       向井 八月
筍         伊藤 真紀子
洗剤        谷川 隆子
チラシで作ったゴミ箱
          林 一男
食材        カーブス楽々園店
          カーブスサンリブ五日市店


今年も善意の食料品ありがとう!
 管理栄養士 青木 ましず
 フィットネスクラブ、カーブス様より2月17日、2月20日の二日間、たくさんの食料品を寄贈していただきました。
この食料品は、フードドライブ運動に協賛された皆様から提供された食材をを集めたものです。今年で8回目になります。
 心のこもった食品に本当に感謝します。ホワイトデーにはカーブスクリームシチュー、ニンジンドレッシング、モカブレンドで楽しみました。
うまいの〜〜〜〜〜〜ぅ!!


《朗読奉仕》
どんぐり会

《読み聞かせボランティア》
新庄 久美子     西山 洋子


※ いつも暖かいご支援ありがとうございます。諸般の事情で掲載を控えさせていただく場合もあります。


人の動き
《退  職》
3月31日付
非常勤職員      新庄 よし子
非常勤生活支援員   保良 美佐子

4月30日付
相談支援専門員    枝折 千秋


《就  職》
4月1日付
生活支援員      迫田 大

4月に職員として採用されました。
利用者の方々がリラックスできる時間、環境をより多く提供できるように頑張ります。
よろしくお願いします。


《異  動》
非常勤生活支援員から生活支援員に
益成 純也(すみや)



編集後記
 「あゆみ」の発行が遅れましたこと、まずはお詫びいたします。4月中の発行を目指しておりましたが、諸般の事情により1か月遅れとなってしまいました。申し訳ありません。
 愛命園の周りは春から夏へ。田植えも終わり、水の張った田んぼからはカエルの合唱が聞こえてきます。レンガ通りの桜は緑の葉に覆われ、ツバメの巣作りも始まりました。
 暑い夏がすぐそこまで来ています。 (HY)