第145号   愛命園だより「あゆみ」   平成21年10月

新法に期待を込めて
園長 藤原 幹男

 先の衆議院議員選挙によって“政権交代”がなされたことは、皆様方には既にご承知の通りでございます。この事が私たち国民の暮らしにどのような影響をもたらすのか、不安と期待が入り交じり、複雑な思いを抱かれているのは私のみならず多くの方々に共通して言えることではないかと推測しております。
とりわけ、愛命園の利用者におかれましては今後の生活におのずと直結してくる『新法』の行方はとても気になるところでありましょう。新政権は「障害者自立支援法を廃止し、障害者総合福祉法(仮称)を創設する」と明言しています。今後、『新法』の基本方針や施行までのスケジュールが示されることと思われますが、障害者とその家族の生活状況を把握し、実態を踏まえた新たな法制度の構築を願って止みません。
 平成15年度に導入された支援費(契約)制度、さらに18年度には障害者自立支援法の施行、その3年後には早くも新たなる法制度に向けての着手、なんと目まぐるしいことか。私のような凡人にとってはその都度、敏速な対応は到底できかねることであります。
 このようなこんにち、つい思い起こされるのが支援費制度の導入期です。当時厚労省から新制度の概要が提示されたのが法施行の約半年前、しかもその中身は愛命園のように、従来、身体障害者福祉法に基づき重度身体障害者更生援護施設として運営していた“盲重複障害者専門の入所施設”にとっては、財政上入所者に対する処遇低下への懸念はもとより、施設の存続さえも危惧される内容でした。異議を申し立てるべく上京を繰り返し厚労省の門をたたくも門前払い同様の回答、当時の園長、山本八重氏と二人肩を落とし無言の帰路、新幹線車中で出るはお互いのため息ばかりだったことが鮮明に思い浮かんできます。
 幸いなことにその後、多くの関係者による暖かい後押し・支援のおかげで何とか危機を乗り切り今日に至っております。その席上私達が強く要望したのが『机上論先行よりも実態重視を!』でした。
 政権政党がどこになろうとも“国民主体の政治”であるべきです。「障害が有る無しに関わらず全ての人が安心して暮らせる社会の構築」の実現に向け、政権政党の責務は重大です。中でも『重複障害者福祉の充実』は切望するところであります。
 障害者基本法の基本的理念に「すべて障害者は、個人の尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する」とあります。真摯な取り組みを期待しております。


新型インフルエンザ対策
看護師 湯浅 節

 平成21年4月WHOは、新型インフルエンザの警戒レベルを、6週間という早さでフェーズ5から6に引き上げました。現在も罹患者が増加しています。この新型インフルエンザに関する厚生労働省の指針を受けて、広島県が対応を提示しました。これに基づき、愛命園でも8月18日に新型インフルエンザ対策マニュアルを作成し、刻々と変化する行政の方針に応じて内容の見直しを行い、10月6日には5回目となる改定を行いました。
 現在、愛命園で実施している主要な新型インフルエンザ対策は下記のとおりです。
1. インフルエンザの館内への流入を予防するための対策として、出勤し館内に入る職員と、外出・外泊 から帰園した利用者・職員は、新設した手洗い場(3ヵ所)での手洗いとヒビスコールSの散布をする。
2. 職員がインフルエンザウイルスの媒介にならない様に、居室に入る前にヒビスコールSを散布する。
3. 居室・館内の定期的な換気をする。
4. 利用者全員の検温と、有熱者の経過観察をする。
5. 職員の健康管理のため、体温測定を1日2回実施し、有熱者は早期に病院受診をする。
6. 季節性及び新型インフルエンザの予防接種を実施する。
 利用者はもちろんのこと職員も体調管理に留意し、新型インフルエンザに罹患しない様に努力していきたいと思います。尚、今後も厚生労働省の指針に沿って、愛命園での対策を検討していきたいと思います。



夏まつりを終えて
生活支援員 河口香菜子

 8月に毎年恒例の夏祭りが行われました。今年はアトラクションとして水内神楽団による神楽上演がありました。迫力のある演技に利用者の皆さんも盛り上がり、楽しい時間となったのではないでしょうか?
神楽の隣で行われたゲームコーナーではヨーヨーすくい、射撃、輪投げがあり、それぞれ景品ゲットを狙って多くの方がゲームをしてくださいました。景品は電池や歯磨きチューブなど園での生活に役立つものばかり。ゲームで景品をゲットできた方々、景品は使っていただけましたか?
屋台ではそうめんやカキ氷が人気で、すぐに完売してしまいました。季節のものがあるとやはり食べたくなってしまうようです。
 神楽や、ゲーム、屋台など利用者の皆さんに夏祭りを楽しんでいただけたようでした。
 また来年も楽しい夏祭りとなるよう努力していきたいと思います。



第35回ススキ採取・配布行事
生活支援員 梅田 大作

 愛命園では、毎年9月の初め町内で採取したススキを、広島市内のデパート前で無料配布、併行していつもお世話になっている関係団体に配布するという行事を続けています。都会ではなかなか見ることができないススキをお届けし、秋の気配を感じていただこうというものです。
 私は前年に引き続き、この伝統ある行事を担当させていただきました。愛命園の利用者・ご家族の方々・全職員・近所の方々の協力を得ることができ、今年度も無事に行うことができました。
 8月31日の採取では約7,000本採取することができました。
 9月1日の配布時も、晴天のなか、利用者のご家族・福屋の店員さんのご協力もあり、約2時間ですべて配ることができました。
 後日、ススキを受け取られた方々より心のこもった礼状をいただき、私どもも元気をもらっています。
ここ最近は利用者の重度化・高齢化が一段と進行し、利用者や職員だけでの実施には、限界を感じています。皆様方からのご援助・ご協力を仰ぎながら、今後ともこの行事を大切にしていきたいと願っています。
 お花を提供して下さったご近所の皆さま、ありがとうございました。



一泊旅行楽しかったよ
生活支援員 前 和枝

 今年も年に一度の旅行がやってまいりました。
 利用者の希望を聴き取りし立案したのが、「新幹線に乗りたい」「広島の流川で飲んでみたいのぉ」「山口がええ」等の意見があり次の7班の中から選択して頂きました。
 1班 山口海水浴(夏を楽しもう) 
 2班 観光バスで福岡に行こう(九州鉄道記念館・柳川下り)
 3班 広島を満喫(夜の流川・お好み村を楽しもう) 
 4班 山口湯田温泉ゆっくりのんびり散策しよう(サファリで動物とふれあい)
 5班 新幹線で熊本へ行こう(サントリービール工場・水前寺公園・カドリードミニオン) 
 6班 日帰り旅行(ホテルでバイキング&買物)
 7班 日帰り旅行(きんたの里で入浴)

それぞれ旅行に行かれた利用者の声を聞きました。

 1班 「海で泳いだん。楽しかったん」

 2班 「鉄道記念館で電車の運転をしたよ」

 3班 「深夜2時まで飲んだでぇ」「お好み村がよかった」
    「大和ミュージアムは説明が聞けたのでよかった よ」
    「本通りでケーキを探してホテルで食べたよ」

 4班 「食べ物が美味しかった」「誕生日プレゼントを買ってもらってよかった」
    「サファリで雨が降った。ライオンがそばで見れた。いろんな動物がおった」

 5班 「サントリーのビールは美味かった。バーベキューがぶち美味かった。馬刺しが、もうちぃとありゃ     えーのー」
    「新幹線や特急リレーつばめに乗れてよかった」
    「観光バスよりは乗り心地ええで」
    「新幹線の旅は、3回目じゃけぇ今度は飛行機に乗りたいなぁ」

 6班 「バイキングの種類はいっぱいあったけど、好きなメロンやバナナ・柿がないのが残念じゃった」

 7班 「お風呂が気持ちえかったよ」

 どの利用者もそれぞれの企画で楽しめたのではないでしょうか。
 来年も元気で楽しい企画を立てて行こうね(^O^)



愛命園コーラスクラブ
コーラス講師 川崎 摂子

 「こんにちは〜!」「あっ、えりさんだ!」「かわさきさんだ!」「昨日は競馬だったんだ」「寝不足で今日は疲れとる・・・」「この前買い物に行ったんヨ」「何を買ったの?」「CDを買った」などと元気な声が飛び交います。
 「出席とるよー」1人ずつ名前を呼ぶとまた次々と元気な返事が返ってきます。
 「じゃ、体操するよ。体を伸ばして〜」背伸ばし体操からグー、チョキ、パーの手の運動まで・・・
 「次は発声いきまーす。息をいっぱいお腹に入れて遠くまで声を届けるように・・・」「アーアー、ドーレーミーファー・・・」
 「今日は何の歌やるん?」「アルプス1万尺からいこうか」元気な歌声が部屋に響きます。
 「男性は下のパートを練習するよ」「ほーじゃ!男性は下を歌うんでー」「ラーラララ・・・ラー」「すごいハモッたよー」
 月2回の練習で行っている「愛命園コーラス」はこんな風に始まります。
季節を主にした曲や昔懐かしい童謡など皆さんが良く知っている曲を中心に歌うのですぐに歌詞も飛び出し、おまけに「この歌は何年に作られ誰が作曲した」などとびっくりするような博識も・・・!!
 ただ一つ残念なのは丁度お風呂の時間と重なるので女性メンバーが最初から揃わないことです。
でもクリスマス会や愛命園開園記念日などの発表の場を楽しみに元気印がモットーの愛命園コーラスは今日も楽しく歌っています。良かったら皆さんもぜひ参加してくださいね。
歓迎しま〜す♪



〜木漏れ日〜リレー随想
「ラジオを聴く生活」
生活支援員 伊藤 章

 一家に1台だったTVも、時代の移り変わりとともに「各部屋に1台」といった家庭も少なくない現代、ラジオを聴く時間が随分と減ったのではないでしょうか。
 愛命園では多くの利用者のみなさんが「ラジオを聴く」生活を続けておられます。
 しかし、湯来の山々にさえぎられ、なかなか聴きたい局が入りにくい現状がありました。
 先日、U支援員と二人、アンテナを取り付ける為の作業を脚立を肩に、各居室を回りながら「ああでもない」「こうでもない」と位置や角度の微妙な調整に悪戦苦闘していました。
 手を進めながらみなさんの喜ぶ顔を想像する内、20年ほど前、我が家のダイニングにも毎朝ラジオが流れていたことをふと思い出しました。
 朝のあわただしい時間、学校に行く準備や朝食を食べながら何気なく聴いていたあの頃のことを懐かしく思いました。
 利用者のみなさんにとって大切な娯楽、そして情報入手の手段であるラジオは、欠かせないものとしてこれからもあり続けるのだろうと思います。
 我々職員は、利用者のみなさんが望まれる環境をいち早く整えていけるよう、今後も一丸となって取り組んでいきたいと思います。



より「安心・安全」な生活に
サービス管理責任者 宇田 辰彦

 愛命園の利用者の平均年齢は、今年度57歳を越えました。以前から、利用者の高齢化が問題になってきていると言われていましたが、これまで自分で歩行ができていた方が車イス対応に変わったり、布団で対応していた方がベッド対応になったりと、実際に重度化・高齢化が進んでいるのだと感じることが多くなってきました。
 利用者の皆さんに、園の中で安心して生活をしていただくため、今年度様々な個所の整備を行いました。
 愛命園のレンガ通り(遊歩道)のレンガの歪みが大きく、散歩をする際つまずく危険があり、改修を行いました。新しく整備されたレンガ通りはフラットで皆さんの歩行に「安心・安全」を提供することが出来ました。前回のあゆみでも紹介しましたが、適温給食の提供を行うための厨房内改修と温冷配膳車の導入を行い、温かい物は温かく、冷たい物は冷たく、食への「安心・安全」を提供することができるようになりました。
また、これまでも居室内にナースコール設備はありましたが、延長コードに対応しておらず、ナースコールのある場所までいってスイッチを押さなければなりませんでしたが、今回の改修で、コードを伸ばせばベッド上からナースコールボタンを押せるようになりました。さらに、フットコールにも対応し、歩行の不安定な方にもすぐにスタッフが駆け付ける事が出来る体制になりました。PHS電話への接続も行い、スタッフが受信機本体のない場所にいてもナースコールを受ける事が出来るようになりました。この改修で、夜間の不安への対応や、素早い対応で「安心・安全」を提供できるようになりました。
 あわせて今年度、障害者自立支援基盤整備事業補助金による、創作活動棟の増築を予定しています。これまで以上に様々な活動が展開できるのではないかと考えています。
 今年度、上記のような対応を行い、利用者の皆さんに、これまで以上の「安心・安全」を提供することができるようになりました。ハード面での改修により、動きやすさ、暮らしやすさが増したのではないかと思います。ハード面の整備が進む中、併せてスタッフのソフト面での「安心・安全」もしっかりと提供していかなければと思います。



園まつりのご案内
生活支援員 神村 恒彦

 朝夕めっきり涼しくなりましたが皆様方いかがお過ごしでしょうか。
愛命園の周囲の田の稲刈りもほとんど終わり、暑い時の青々とした田と対照的な風景です。さて多くの方に支えられている園祭りが近づいてまいりました。昨年は連休の関係で例年と違い22日の開催となり一部のお客様にご迷惑をお掛けし大変申し訳ありませんでした。園祭りは23日と定着していることもあり今後は連休とは関係なく毎年11月23日開催ということで決定しました。
 また今年は新型インフルエンザの流行で各地の行事が中止、縮小といったケースも多く耳に入っています。しかし園では例年通りアトラクション、バザー、模擬店等来園客の皆様にお楽しみ頂けるよう利用者、職員ともにやる気充分で準備を進めていきます。当日の好天を望みながら多くの方のご来園を利用者、職員、関係者一同心からお待ちしております。


平成21年度 愛命園園まつり

 日時 平成21年11月23日(月)
            勤労感謝の日
    10時〜14時半(雨天決行)
 催し物 ・バザー   ・利用者作品展示
     ・模擬店(うどん・おでん等)
     ・アトラクション
        (和太鼓・ソーラン等)



【寄せられた善意】
[平成21年7月24日〜平成21年10月23日]
(順不同・敬称略)
《現  金》
森 洋子       益田 正子
野上 好子      中野 富貴子
前川 昭夫      水内神楽団
宮本 進       吉見 斉
富士産業株式会社 中国事業部
共栄金物株式会社   美鈴が丘高校バレー部
清水 光信      伊東 悟
森井旅館       ワンツーサロン
YMCAコンフォレスト湯来
青原 清美      伊東 三喜枝
湯来ジュニア野球クラブ
湯来ふるさとプロジェクト

《現  物》
梨、りんご、飲料他 谷川 隆子
焼きのり      NPO法人フードバンク
               あいあいねっと
梨、みかん     末田 弘明
玄米        川霜 紀之
玄米、冷凍コロッケ 田室自動車
おもち       湯来東小学校
缶ビール      村本 幸信
ススキ配布の花等  
河野 房子     野上 好子
森 登志春     岡田 麻里子
本毛 稔      湯浅 節
林 敦子      宮田 恵美子
宮木 真里子    宮本 ミチコ
野田 江美子

《朗読奉仕》
どんぐり会      湯来朗読サークル

※いつも暖かいご支援ありがとうございます。諸般の事情で掲載を控えさせていただく場合もあります。

本誌の掲載写真については、同意を得ております。

【編集後記】
 食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋。皆さんはどのようにお過ごしでしょうか。私は専ら食欲の秋ですが… (HY)