第133号   愛命園だより「あゆみ」   平成18年10月

入所者の生活は今…

園長 竹原 幹

 4月に障害者自立支援法が一部施行されて6ヶ月を経過しました。先行して施行された目的は障害者に対する自己負担の大幅な増額です。その内容は障害者の支援に対する定率負担と食費光熱水費の負担です。これらの負担額を合わせると高額になり、障害基礎年金受給者は生活できなくなるところから、補足給付費の支給や、個別減免を実施して自己負担の軽減が図られています。障害基礎年金1級の受給者では自己負担が約5万7千円となり、生活費として手元に残るのは約2万5千円程度となりました。
 支援費制度における自己負担が約3万円強であったことを思うと約80%増額になっています。まして預貯金が350万円以上ある方については、ほぼ障害基礎年金と同額を自己負担することになっています。このような大幅な自己負担の増額によって施設入所者は日々の生活においていっそうの節約を余儀なくされています。
 施設で生活していても国保税や介護保険料など必要経費に加えて生活していく上での消耗品費やクリーニング代、散髪代、趣味娯楽の費用等を加えると2万5千円を超えてしまいます。これらの経費のうち必要経費を除くと、本当に入所者が自由にできる金額は少なくなってしまいます。従って趣味娯楽費を節約し、散髪やクリーニングの回数を少なくするなど努力をしておられますが、それでも年金の範囲内で生活することは難しくなっています。まして入所者が最も楽しみにしておられる年一度の一泊旅行の費用は年金ではまかなえません。
 障害基礎年金の支給額を越えた経費についてはこれまで積み立てた預貯金でまかなうことになります。私たちの施設に入所しておられる方のほとんどは障害基礎年金の受給者です。それ以外の収入がありません。このような方々にとってはまったく普通に生活していると預貯金が徐々に少なくなっていきます。今後預貯金が増えることは考えられません。この場合二つの懸念すべき事柄があると思います。
 その一つは徐々に預貯金が少なくなっていくことによる将来への不安です。
 二つ目は若い方ではほとんど預貯金がありません。障害基礎年金のみで生活することはわずかの趣味や娯楽も我慢し、ましてや年一度の一泊旅行も難しくなってしまいます。
 愛命園の入所者は年齢も高く、入所期間も長いため比較的預貯金のある方が多いので当面はその預貯金を取り崩しながら、ほぼこれまでの生活を維持できる人が多いように思います。しかし、これから入所される方や若い障害者のことを考えると、所得保障をしないままに、ただ自己負担だけが増額になるのは、あまりにも入所者に酷としか言いようがないように思います。
 施設に入所できている障害者はまだ何とか生活だけはできます。しかし地域社会で生活しようとがんばっている障害者は本当に生活できるのだろうかと考えると心が痛むこのごろです。

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ススキをどうぞ

支援員 伊藤 章

 採取は昨年に続き天上山一本で行いました。当日は出発間際まで小雨が降った為、参加予定利用者は園に残留というまれに見る形となりました。山頂に着くと雨も霧に変わり、とても涼しくかえって作業を行い易い天候となりました。ススキも昨年同様に沢山生えており、午前中の作業のみで十分な量を採取することができました。合計5300本と採取予定数を上回る数でしたが、家族の方のご協力を頂き、仕分け作業も14時には終えることができました。
 配布ではススキに添える沢山の綺麗な花を地域の方々から提供して頂き、開始早々から行列ができる大盛況となりました。「湯来から小さな秋をお届けしています!!」「ススキをどうぞ!!」利用者は新メンバーの住田さんの大活躍もあり、仕分け用のテーブルに山のように積まれていたススキや花も、手を止めることが出来ないないほどの忙しさで配られていきました。
 「ススキありがとう!!」「綺麗な花ね!!」と福屋前の歩道はススキを抱えた人達が行き交っていました。また、利用者の谷川さん、三井さん、小山さんも最後まで責任を持ち笑顔で配って下さいました。

(生活班の壁面構成)



緊急避難で受けた地域の温情に感謝

支援課長 藤原幹男

 去る9月16日の夜間から翌未明にかけて思わぬ豪雨に見舞われた湯来町。昨年9月の台風災害の復旧工事も遅々とする中、追い討ちをかけるがごとく町内各所に想像を絶する大被害をもたらせてしまいました。特に危険箇所の住民に対し次々と避難勧告が発令される中、当愛命園にも深夜1時過ぎに勧告が発令されました。うかつにも、この日、特別な職員態勢はとっておらず、翌17日、最も影響を及ぼすと思われた台風13号に対する警戒の方ばかりに気を取られてしまった甘い判断に大いなる自戒の念を抱いているところです。
 町内各地に次々と発令される避難勧告の報を聞き、急いで園に向かうも既に通勤路は通行不能、結果的にその夜の当直職員だけで対応せざるを得なくなってしまいました。幸いにこの窮地を救って頂いたのが消防署の職員さんはもとより、特に消防団員の方々による敏速な対応で全員が無事に避難することができました。あらためて心より厚くお礼申し上げます。
 一方、避難先である総合福祉センター(サンピアゆき)においてもスタッフの皆様方の多大なるご支援を頂き、何とか厳しい一夜を過ごすことができました。
 翌17日は台風13号による被害を警戒し職員態勢も整え、早目の自主避難を実施しました。二夜続けての避難生活、それを快く受け入れて頂いた福祉センター。館長さんをはじめ、スタッフの皆様お一人一人に対し、あらためて心より厚くお礼申し上げます。
 今回の避難では多くの人達、とりわけ地域の方々には大変お世話になりました。皆様方より頂きました数多くの温情に感謝いたしております。私達も常日頃、“地域あっての愛命園”との思いで生活しています。今回、肌を通じてこの事の大事さ、大切さを再認識させて頂きました。と同時に愛命園がいろんな意味で地域の資源として活用して頂けるべく最大の努力を惜しんではならないとの意を強く抱いているところです。本当に有り難うございました。



夜無谷川(よなしだにがわ)の土砂が浚渫(しゅんせつ)されます

支援員 長峯 公明

 夜無谷川の清掃行事を今年も7月末に行いました。草刈機や鎌で河床や護岸の草を刈り、ヨシの根元にからんだビニール袋や川底に沈んでいた空き缶、空き瓶などのゴミを拾いました。事前に参加希望を募り、それに応じた利用者5名も加わって、刈り取った草や回収したゴミの運搬作業などを受け持ちました。
 昨年に比べるとゴミの総量はやや少なかったようにも思いますが、それでも優にリヤカー2台分のビニール袋や空き缶・空き瓶、波板、植木の剪定枝などを拾い集めました。前日までの降雨で場所によっては股下までの水位があり、例年になく大変な作業となりましたが、地域の方のお手伝いもあり、お昼までの3時間弱で予定していた範囲の清掃を無事に終えることができました。
さて、年々、土砂の堆積が進行する夜無谷川。河床の上昇により、最近は短時間にまとまった雨が降れば見る見るうちに増水し、濁流がコンクリート護岸の上部の土部分を洗うといった光景が珍しくなくなりました。先月中旬の台風13号に伴う大雨では、本流の水内川と共に近年になく水位が上昇し、ふた晩続けて福祉センターに避難するという事態にもなりました。
ご承知の通り、当園は本流の水内川とその支流である夜無谷川に挟まれた地形にあります。夜無谷川が氾濫すれば、肝心の国道に出る避難路を奪われることにもなります。かねてから地元町内会を始めとして、川に隣接する当園も「河床の土砂を浚渫して欲しい」と行政当局への要望を重ねてきました。
この8月には、地元町内会と当園の連名で改めて要望書を作成、町内会長さんの現地調査の資料も添付して広島市に提出致しました。その結果、9月中旬、「今年度事業として一部着工」との回答を頂きました。着工時期や浚渫区域などはまだ明らかではありませんが、大雨が降るたびに不安に駆られていた状況が改善されるかと思うと大変嬉しく思っています。地元町内会を始めとして、ご努力いただいた関係者各位に厚く感謝申し上げます。

(夜無谷川)



一泊旅行

支援員 高橋 義彰

 今年から運動会がなくなり、少しさみしい感じもありましたが、その分、恒例の一泊旅行が9月から可能となり、6班に分けて一泊旅行を実施することができました。
1班は岡山・皆生温泉方面、2班は松山方面、
3班は別府方面、4班は庄原方面、5班は日帰りでプリンスホテルでの食事、6班も日帰りで周防大島・みかん狩りを実施しました。各班とも、幸いにして天気にも恵まれ楽しい旅行となりました。 
以下参加された利用者の感想をご紹介します。



1班 皆生温泉 
利用者 桑田 尚明

 僕らは皆生温泉へ行きました。最初にぶどう狩りにいきましたが、とても甘みがあって食べやすい美味しいぶどうでした。梨の試食もできて、得した感じでした。その後、安富牧場にて、乳搾り体験をしたのですが、僕の要領が悪かったのか、あまり出てきませんでした。それでも少量ですが、その搾った乳を飲んでみると、甘みはあまり感じませんでしたが、あたたかいものでした。
 ホテルでは部屋も広く、何より食事が感激でした。カニがとても美味しくほっぺが落ちるほどでした。全体的にとても楽しい旅行となりました。ありがとうございました。



2班 松山方面
初めてのぼっちゃん劇場への旅 
利用者 井上 裕司

 僕たちは松山には、一度船旅をしたことがあるのですが、今回の旅は坊ちゃん劇場に出向いていきました。旅行に行くまでは、避難勧告がでなければよいと気にしていました。旅行前に避難勧告がでて、道も通れなくなりましたが、旅行をすることができて楽しかったです。今回の旅行のガイドさんは、馴染み深い浅井恵子さんが来られました。バスの中ではガイドさんの説明を一生懸命に録音していました。しまなみ海道を渡った時、いつも月曜日の朝礼で合唱している「われらの愛命園」を歌っていきました。天気はとても快晴でした。宿泊ホテルは大和屋本店という旅館でした。チロルの森というところに行ってパン作りをしました。その後、僕らは散策をして昼食をとりました。来年は徳島へ行ってみたいというのが僕の感想と抱負です。運転手さん、添乗員さん、ガイドさんには何かとご迷惑をかけることが多かったと思いますが、申し分のない二日間でした。お世話になりました。また来年も会えることを願っています。



3班 別府方面
利用者 中谷 明・徳永繁明

職員 「別府への旅行はどうでしたか?」
中谷 「よかったよ。」
徳永 「よかった。新幹線のったんよ。あのぉ、水族館がえかったのお。」
中谷 「海があったじゃろ。あれがえかった。」
徳永 「観光バスのガイドさんもえかったでぇ。」
中谷 「おう、えかったのぉ」
職員 「また来年も旅行へいきたい?」
中谷 「わしゃ行くでえ。」
徳永 「来年は海へ行こうかのぉ。」



4班 庄原方面
利用者 野崎 賀世

Q、旅行はどうでした?
A, よかったよ。ずっーと行ってなあ、道がえかったな。
Q, 何か美味しいもの食べましたか?
A, うん。ようけあったよ。いっぱいねぇ。
Q, お風呂はどうでした?
A, あそこなぁ、気持ちよかったなぁ
Q、また行きたい?
A、またなぁ・・・来年もな。



5班
プリンスホテル・買物
利用者 住田 昭枝

 ご飯食べに行ったんよ、えかったぁ。みな食べたんよ。それとね、化粧品やハンカチ買ったよ。出かけて行くのは好き。また行きたいよ。



6班
周防大島・みかん狩り
利用者 天保 静子

Q、旅行はいかがでしたか?
A、海が近いのがびっくり。ホテルに入るとすぐ外は海で船が通るのがわかりました。窓を開けたとたんに、とても良い風と、潮の香りが入ってきてほんとによかったです。でも航空機の音がちょっとねぇ・・・。テレビのニュースとかでは聞いていたけれど、地元の人は大変でしょうねぇ。
Q、みかん狩りはどうでしたか?
A、みかん狩りは・・・。ちよっとすっぱかったから・・・。すっぱいものが好きな人はよかったんでしょうね。
でもああして木になっているみかんは初めてだったし、みかんもひとつじゃ分からないけど、たくさんになるとホントに重くなるんですよ。みかんの重さを知ることができました。よかったですよ。



夏まつり

支援員 沖田幸久

8月11日(金)夕方より恒例の夏祭りが開催されました。例年までは祭りの雰囲気をより楽しんでいただくためグランドに会場を設営し屋外での行事としていました。しかし、トイレ誘導が大変、電源が不安定でイベントに支障をきたす、天候の心配があるなど不都合も生じていました。そこで今年は地元の子供神楽と園の神楽の共演をメインに屋内のホールにて祭りを行うことにし、屋台コーナーをレンガ通りに設営して焼き鳥や飲み物等を販売しました。
最初こそ利用者以外の人影はまばらでしたが子供神楽が始まる頃には多くの地元の方が来られ、とてもにぎやかになりました。子供たちがとても可愛くて、一生懸命舞っている姿に拍手喝采でした。屋内でも十分楽しんでいただけたと思います。
また、屋台コーナーでは日清医療食品よりたくさんの方がボランティアとして手伝ってくださいました。ありがとうございました。



【寄せられた善意】
[平成18年7月26日〜平成18年10月25日]
(順不同・敬称略)

《現  金》
向井 重美    上原 利枝
木村 進匡    森井旅館
丸田 義行    青原 清美
中本 政登    前川 昭夫
藤井  貢    白井 禮子
上垣 邦子    高橋 啓光
愛命園家族会   西本 友則

《現  物》
新庄 竹子    花 (カサブランカ)
向井 重美    乾麺・椎茸
桑田 幸子    きゅうり
中野眼科     飲み物他
仲田 志信    イチジク
坂口クリーニング 新米
田島  定    みかん
田中 フミコ   サツマイモ
宮田 恵美子   花(けいとう他)
土井 一女    花(けいとう他)

異  動
《退  所》
小川  浪子さん
 長期療養のため8月31日付で退所されました。



【編集後記】
 秋の心地のよい日が続きますね。例年だと、そろそろ肌寒くなる時期ですが、まだまだ暖かい日が続いています。今年は暖冬になるのでしょうか・・・? この地方では、「カメムシが多いから、今年は雪が多いかなぁ?」というカメムシ占いのようなものがあります。 正式名はわかりませんが、ジャコウとも呼ばれている強烈な匂いを放つ小さな虫のことです。 冗談のようですが、これが当たるんです。おそらく根拠はないのでしょうが、ホントに当たるのです。雪道の運転が苦手な僕としては、雪は少ない方がよいので、カメムシが少ないことを願います。・・・今年の冬はどうなることか。 (高橋)