第132号   愛命園だより「あゆみ」   平成18年7月



2杯の苦汁

園長 竹原 幹

 この4月から障害者自立支援法の一部が施行されて4カ月が経過しました。この自立支援法の施行に当たり、私どもの施設愛命園は「2杯の苦汁」を味わった思いです。
 1杯目は入所者数の上限の変更です。今年の3月31日までは定員の110%の入所が認められていましたが、何の前触れもなく、3月になって4月からは定員の105%を越えていると、全員の支援費を30%減算することが明らかになり、私どもは、まさに眼と耳を疑いました。
 視覚に障害が出てきたために、これまで入所していた施設からは安全上の理由で退所をすすめられ、また視覚に障害があるという理由で他の施設からも入所を断られ、行き場所がなくなって本人・家族・市町村の担当者が藁をもつかむ思いで愛命園を訪ねてこられるのです。私たちはこのような状況を眼の前にした時、職員の過重労働等を懸念しながらも障害者が安心して生活できる場所を提供したいという思いと、ご家族や市町村の強い願いを受けて、定員を超えることを承知の上で65名入所していただいていました。その背景には、厚労省が定員の10%増を認めていたということがありました。
 ところが3月に突然事実上4月1日から定員の105%以上は認められないかのような通達を受けて、まさに青天の霹靂の思いでした。これまで私たちは国の意向に反するような運営をして来たのだろうか、間違った運営をして来たのだろうかと何度も自問自答して見ても納得ができませんでした。私たちは行き場のない障害者が安心して生活できる場を確保するために最大限努力して来たという自負があります。それだけにこのような国の方針に我々の誠意を踏みにじられたという悔しさがこみ上げて来ました。こんなことがまかり等って良いのでしょうか。本当に叫びたい気持ちでいっぱいです。
 2杯目の苦汁は「視覚・聴覚障害者支援体制加算」です。3月1日の厚生労働省の会議資料に新設加算として視覚・聴覚障害者支援体制加算が記載されていました。この加算の条件として視覚障害者あるいは聴覚障害者の入所施設でこれらの障害者の支援をするために職員の加配をしている施設となっていました。愛命園はまさにこの条件を十分満たしていましたので、広島市にしつこいほど電話をして確認させていただきました。その度に、「この条件だと加算がつくはずだ」と言われ、5月には加算をつけて請求して見なさいとまで言っていただきました。しかし間もなく愛命園はこの加算の対象にならないという連絡をいただきました。
その理由は措置制度の時に身体障害者更生施設において視覚障害者あるいは聴覚障害者の更生を支援するために職員の加配をせざるを得ない施設に国と県が協議して加算をつけていたようです。
 措置費制度の時代には愛命園の施設の種別は重度身体障害者更生援護施設であり、確かに更生施設ではありませんでした。しかし、平成15年に支援費制度に移行した時に国から一方的に視覚障害者更生施設に位置づけられてしまいました。この加算のもう一つの条件が、これまで都道府県と国とが協議して加算がついている施設とあるために愛命園は対象外となってしまったのです。
 この加算制度ができた時に更生施設でなく協議の対象にならなかったかもしれませんが、一方的に更生施設になった時には既に遅いからこの制度に該当しないというのは加算制度を設けた精神に反するのではないでしょうか。現状はともあれ、以前、該当していなかったので今も該当しないと言われるのは本当によく分かりません。
 昔から「良薬は口に苦し」と言います。私たちもこの2杯の苦汁を教訓として良薬に帰るべく今後とも頑張っていきたいと思います。



開園記念日

事務長 林 弘子

 6月1日で愛命園は33歳になりました。例年その日に行う開園記念行事を今年は都合により6月8日に行いました。開園記念式は、物故者に対する黙祷に始まりました。開園当時の法人会長や事務局長をはじめ、愛命園の開園並びにその後の発展に尽力された多くの方々が既にこの世を去っておられます。
 黙祷に続いて竹原園長のお話のあと、今年で.勤続30年の藤原支援課長に法人から表彰状、家族会から感謝状が贈られました。みんなでお祝いの膳を囲み、アトラクションとして、コーラスクラブの合唱と、盲目のピアニスト三浦由美さんのトークショーがありました。三浦さんの選曲はどれも親しみやすい曲で、みんな引き込まれていました。最後にアンコールで「エリーゼのために」を弾いていただきました。
 鍵盤の上を流れるような指の動き、きっと血のにじむような練習を重ねて、エリザベト音大.を卒業なさったのでしょう。障害のあるなしにかかわらず、
 “人は努力”です。それを改めて感じた33回目の開園記念日でした。



大漁だぁ

6月のグループ外出より
指導・支援員 沖田 幸久

 愛命園では年に数回の外出があり、担当が複数のプランを提示して利用者に行き先を選んでいただくようにしています。人気のある企画は複数に分けて、人気の無かった企画はボツに。これまでたいてい買い物や温泉施設が人気です。
今回は新たな場所を開拓しました。最近広島市内に新しくできたアミューズメントスポット「マリーナホップ」にある釣り堀茶屋「ざうお」といいます。お店の中に釣り堀があって釣った魚をその場で調理してもらえる、なんともワクワクな内容。釣り上げたら店員さんが「○○さん大漁おめでとうございます」と皆の一本締めで祝福してくれて、恥ずかしいけどとてもいい気分! 利用者の中には伊勢えびやヒラメなどの高級魚を釣った方もおられました。その後、早速料理されて出てきました。さすがにうまい。
普段の給食では調理されたものが出てきます。食材の本当の姿を知るとても良い機会になりました。

平成18年度・第1回グループ外出
お 品 書 き
(1)サンリブでお買物T(6/1)
(2)オークガーデンで入浴・昼食(6/5)
(3)アルカディア・ビレッジで
入浴・昼食(6/13)
(4)サンリブでお買物U(6/15)
(5)焼肉レストランとお買物(6/22)
(6)居酒屋とお買物(6/27)

生活班 大森神社にて散策中。



笑顔に励まされて

管理栄養士 青木ましず

 愛命園に勤務して4ヶ月が過ぎ、初めての夏が訪れました。れんが通りの桜のつぼみがまだ固い頃着任して、それから満開の桜に、近隣の菜の花畑が黄色のじゅうたんとなり、菖蒲のそばで蛍が舞う頃からもう梅雨明け。あっという間にこの期間が過ぎました。
 入所者のみなさんとは、会話もはずむようになり、「あれが食べたいよ!」「これは嫌いじゃけえ!」「冷たい物出してや!」等など、要望もたくさん聞かせてもらえるようになりました。
 みなさんは、本当に食事を心待ちにしてくれています。かなり早くから席で待つ方もおられるし、時間前の廊下はとても賑やかです。作業中も献立の話題で盛り上がる事もあると聞いています。
 A君はひどい偏食でしたが、語りかけで少し改善できました。Bさんはとても少食ですので、栄養価の高い物で補っています。数名の方には生活習慣病としての治療食を必要とすると考え、嘱託医の先生の指示の元に開始しました。そのほか噛まない、飲み込めない、集中して食べられない、食べようとしない方など、個人対応の必要性も重要だと感じ、委託業者のみなさんのご協力の元に細かい対応をしています。
 今、実施している内容を少し紹介したいと思います。
主食量の個人対応
ご飯 普通量 13人
    中間量 29人
    少量 11人
    増量 3人
    超増量 2人

軟飯 普通量 3人
    中間量
    少量 1人
    増量 2人
    超増量 1人

食事形態の対応
一口大カット(食べやすくする) 5人
きざみ(噛み切れない方) 17人
超刻み(噛み砕きにくい方) 8人
ミキサー(飲み込みにくい方) 7人

特別治療食
減塩食5g 1人
減塩食7g 1人
糖尿食1200kcal 1人
糖尿食1400kcal 4人
糖尿食1600kcal 2人

アレルギー&嗜好による禁止食品
うどん 7人
スパゲティ 5人
そうめん 4人
そば 1人
サンドイッチ 1人
やきめし 2人
カレー 4人
ハヤシライス 6人
寿司 4人
鶏肉 2人
豚肉 1人
えび 3人
うなぎ 2人
あなご 1人
さば 7人
かき 4人
魚 3人
チーズ 7人
ヨーグルト 4人
乳製品 1人
卵 2人
山芋 3人
こんにゃく 1人
納豆 16人

* 飲み物の対応(温かい、冷たい、牛乳、野菜ジュース、ヨーグルトなどの選択)
* 漬物類の対応(沢庵、刻み沢庵、ふりかけ、うめぼしなどの選択)
* 食器の対応(特別スプーン、軽い丼、高さのある皿などを使用)
 愛命園の入所者の方の食事提供がこんなに難しいとは、はっきり申し上げて思っていませんでした。献立も食材も食器も、セットする位置も、汁・お茶の温度も、と教えられる事ばかりですが、これからもニーズの把握、評価をしながら喜んでいただける食生活を、私一人ではなく職員のみなさん、そして心強いサポートをして下さっている日清医療食品株式会社のみなさんとともに手と手をとりあって前向きにやって行きたいと思っています。
入所者のみなさんの笑顔が私の元気の源です。これからも宜しく御願い致します。



3回のでぃっしゅクラブを終えて

介護員 今西 朋美

毎月1回、「でぃっしゅクラブ」を行い、利用者も徐々に慣れてきた様です。月目標を掲げ職員が献立を考えて味噌汁、目玉焼き、餃子、サンドウィッチ、おにぎり、オムレツ、大根のそぼろ煮、ポテトサラダ、スープ、にんじん白玉等を作りました。利用者にとって一番難しいのは包丁を使う事の様です。最初は大きく太く切られた野菜が目立ちました。回数を重ねる毎に包丁の持ち方や切り方のコツを理解し、野菜のみじん切りが上手に出来る様になりました。餃子はいつも出来た物を食べている為、作る過程を知り、「いつもの形だ」「こうして出来るんだ」、と完成した時に感動していました。自分達で作って食べる喜びと感動で利用者は笑顔で残さず食べています。



利用者の声
桑田 尚明

 「いろいろな事にチャレンジしてみたい私」
今年度から毎月1回木曜日に行なわれる「でぃっしゅクラブ」に私もチャレンジしてみる事にしましたが、料理を作った事がない私にとって出来るかどうか、とても心配で不安でした。私はご飯の炊き方や作り 方を手取り足取り教えてもらった。味噌汁は難しか
った。味噌の加減が難しかった。少しずつ入れて味をみた。美味しかった。リンゴの皮むきは本当に難しかった。「でぃっしゅクラブ」は色々な体験が出来るので良いです。今後も努力して頑張っていきたい。



神楽クラブ 湯来温泉
夏休み親子神楽鑑賞会

先日、湯来温泉にある湯来ロッジ、「白鷺殿」にて夏休み親子神楽鑑賞会に神楽クラブが出演させていただきました。練習不足なところもありましたが、技術は二の次、気持ち的に乗って本領発揮できました。楽しんで演技をすることができました。次回8月25日(金)、20時から、出演する予定ですので、皆さんお誘い合わせの上、お越しください。がんばります。

【寄せられた善意】
[平成18年4月26日〜平成18年7月25日]
(順不同敬称略)

《現  金》
青原 清美   向井 重美
藤正 坂二   安村 知子
石本 一憲   川端歯科医院
辻村登美子   中野 富貴子
《現  物》
末田 弘明   野菜・フルーツ
越智 節子   官製ハガキ
田島  定   甘夏かん
向井 重美   乾麺・ジュース
新庄 竹子   ゆりの花
石井 竜也   車イス
(ミュージシャン・平和記念公園ライトアート
プロデューサー)
※ いつもありがとうございます

《清掃奉仕》
6月27日梅雨の晴れ間に毎年恒例の湯来地区民生委員・児童委員協議会の皆さんによる清掃奉仕がありました。なかなか職員の手が回らなくて・・・・・・、毎年心待ちにしております。暑い中、本当にありがとうございました。



【編集後記】
 暑い夏がやってきました・・・。クーラーのあたり過ぎで少し体調を崩してバテ気味です。ですが各地では大雨による深刻な被害が多く出ているようですね。局地的な集中豪雨。テレビの画面を見ながら数年前、愛命園に繋がる道路が大雨の影響で通行止めになったことがあり、旧佐伯町を大回りしていたことを思い出しました。昨年の台風の影響で崩壊した愛命園に続く道路は、未だ修復作業が続いています。修復工事終了の予定は8月末までということだったので、台風シーズンには、終わるものと思いますが、これも地球温暖化の影響でしょうか・・・。便利になった世の中ですが、人が環境を破壊し、そのつけがこうした形で返ってきているのだ、とテレビのコメンテーターが言っていました。クーラーは控えめにしようと、反省します。 (たかはし)



※社会福祉法人 広島県視覚障害者団体連合会の平成17年度決算報告は愛命園HPに掲載しております。
http://www.aimeien.jp