第131号   愛命園だより「あゆみ」   平成18年4月

過大包装の福祉

園長 竹原 幹

 私は昨年末に家内と小旅行に出かけました。ホテルで子どもへのみやげを探していると、そこの土地でとれたお米を使った・手焼きのお煎餅がありました。包装も立派で「これなら」と買い求め、子どもに渡しました。
 お煎餅の好きな子どもはさぞ喜んでくれるだろうと悦にいっていたところ、次の日に子どもがわが家にくるなり、「こんなこと言っては申し訳ないけど、あのおみやげは格好ばっかりだったよ」と言われて、よく聞いて見ると包装はとても立派だったが、中身はクッション材や乾燥材でお煎餅は少しで、おまけに割れていたというのです。見た目だけをよくしておけば、中身はどうであれ旅行客に売ってしまおうというお店の方針を見たようでとても残念でした。
 このような思いをするのは旅行先のおみやげだけではないような気がします。
 この4月から一部施行された障害者自立支援法には「障害者の能力と適性に応じて自立した日常生活や社会的な自立ができるための支援をする」ことが目的として掲げられています。研修会で厚労省の方からは障害者一人一人のニーズに応じたきめ細かな支援をしていくこと、地域において障害者も共に生活できるようにするための福祉制度改革だと力説されました。
 しかし、具体的な施策が明らかになるにつれて、障害者自立支援法は真に障害者の自立を支援する法律なのだろうかと疑われるばかりです。
 支援費制度の破綻を招いた厚労省に対する責任野付を立場の弱い障害者に転化されたのではないかと言うのは思い過ごしでしょうか。障害者自立支援法の施行によって障害者が感じるのは自己負担の大幅な増加と受け皿がないのに地域に帰されるのではないかという不安というか恐怖だけです。
 少子高齢化により国も地方も財政的に厳しいことは、みんなある程度分かっています。だからこそ率直に実現可能な福祉制度について説明していただきたいと思います。表面的には素晴らしい言葉が並んでいても、実体的には福祉の後退では、そのギャップに憤りを感じるだけになってしまうのは私だけでしょうか。
 旅行先のおみやげと同じように、包装と中身とが一致したものにしていただきたいと思います。中身が粗末な物であればそれに適した包装をしていただきたいと思います。そのことがおみやげを買う人、もらった人に対する誠意であり、障害者福祉も建て前と具体的な内容が一致することこそ障害者や家族、また福祉関係者に対する行政としての誠意ではないでしょうか。



真の“支援”を願う『自立支援法』

支援課長 藤原 幹男

 いよいよ『障害者自立支援法』というハリケーンが我家(愛命園)にもやってきた。
 「災難は突如としてやってくる」
 聞き慣れた言葉ではあるが、この度の新法施行もまさしく同様の感を抱いている。
 新法の詳細が明示されたのが、今年3月1日。段階的ではあるが、4月1日からの施行である。まさしく“突如”の表現しか思い浮かばない。
 段階的スタートの背景には厚労省サイドの“支援費制度の財政難”を手当てすべく苦悩の色が見え隠れ、担当者のご苦労は大変だったろうと推測する。そのため、とにもかくにも財源確保を最優先、「増大する福祉サービス等の費用を皆で負担し支え合う仕組みの強化」との美辞麗句のもと、利用者負担増を先行、準備不足の施設等、新事業への移行についてはボツボツと、5年間もの『経過措置』を設けている。この間、慎重に検討しつつ新事業体系の中から有意な選択をしてください、との有り難い配慮(?)がなされている。
 この事に対し、素直に反応すればよいものを元来「ひねくれ者」の私、この間に『介護保険』との統合が浮上してくるのではないかと疑視している。素人考えしか持ち合わせていない私からすれば、今回のような「新しい法案」スタートは、全ての準備が整った後に「ヨーイドン!」の号砲が打ち鳴らされるもの、と勝手な思いを抱いている。
 先に、近い将来の「介護保険との統合」と記したのには、『介護保険法』の理念と『自立支援法』の理念とが一致するところにある。
 平成12年にスタートした『介護保険法』は障害者施策を含めて対象とすることを想定し、決して「高齢者介護保険法」ではなく、年齢や性別を問わず、介護サービスを必要とする人が最小限必要なものを地域で受けられる仕組みとすることを理念としていた。
 しかし、対応が急がれている高齢者介護の方を先行スタートせざるを得なかった、という事情もある。
 近い将来、今回の『障害者自立支援法』が『介護保険法』に統合されるという話がよく聞こえてくるのは、そもそもの出発点、年齢、障害、症状を問わず、介護が必要な人が地域社会の中で必要なサービスを受けられる仕組みを構築(ノーマライゼーション社会の構築)するという共通理念の実現を目指しているからだ。
 [障害者自立支援法の解説から一部を引用]
 
 先般、ある新聞でとても気に掛かる投稿を読ませてもらった。
 中途の視覚障害者の方が、これまで利用していた「中途失明者生活訓練事業」を『自立支援法』による利用者負担の増額のため止むなく断念せざるをえなくなった、との主文である。これが現実の事とあれば、なんとも悲しく腹立たしいことか。
 『障害者自立支援法』の出現により、これまで可能だった“社会自立”に向けての訓練等への参加が不可能になってしまう。これでは全く本末転倒である。
 施行間もないことゆえ、サービスの利用者にとって不都合な点が大なり小なり生じてくるやも知れない。それら利用者の「生の声」に本気で耳を傾け、真(まこと)の『自立支援』が実現することを切に願っている。
 一口に「地域社会での共生」とは言うものの、当事者にとっては大変な苦難の業である。
『弱者救済の政治』を熱望してやまない。



グループ外出紹介

江波山気象館にいって
岡野克則

僕は江波山気象館に行っていろいろなものを体験しました。僕は雷の部屋で雷を鳴らしました。僕はパチット電気が来たのが怖かったです。
又風の体験も良かったです。
風力計にも触りました。又機会があったら行きたいです。



「映画いったよ」
小山 幸隆

小山「僕、映画いったよ。えかったよ。」
職員「どんな映画だったの?」
小山「トラがでた・・・あとはわからん。」
職員「おもしろかった?」
小山「うん、おもしろかった」
職員「また行きたい?」
小山「ううん・・・もういい・・・」



「サンリク(サンリブ)がいいの!」
越智 英一

「サンリク行ったよ。サンリクで買物するんよ。
ドボルザーク作曲 交響曲第9番 ホ短調 新世界買うの。6月もサンリクへ行くんよ。サンリクがいいの!」



「江波山気象館」
長谷 泰江
江波山気象館にいったよ。カミナリがちょっとパチンと大きな音がした。ちょっとビックリした。雲の中にも入ったよ。雲の中が白なって、楽しかった。よかったよ。



でぃっしゅクラブ

介護員 今西 朋美

 今年度より新しくでぃっしゅクラブを始める事になりました。
1. 普段、自分たちが食べている物はどう出来ているのかを知る
2. 食べるだけでなく、学習し作る事を通して食を見つめる
3. 調理器具に触れる機会をもつ
4. 実際にやってみて、様々な経験を増やす
5. 毎回の目標に向け、メンバーで協力し合い達成感を感じてもらう
この5つの目標を掲げ月1回実施します。メンバーは男性3名、女性3名で栄養士と介護員2名の計3名の職員が共にクラブに参加します。
 毎月違う目標を立て、目標に沿った献立を職員で検討し、入所者一人一人に準備から片付けまでの一連の流れを通して実施していこうと思います。



喫茶クラブからお楽しみ会へ

支援・指導員 高橋 義彰

 愛命園の利用者の大半は、夕食が終わるといつもディルームへ集まってコーヒー等を飲みながら、やすらぎのひと時を過ごしています。愛命園ではこの時間を『お楽しみ会』と呼び、コーヒーや紅茶、買物で購入してきた果物など、職員がウェイター・ウエイトレスとなって奮闘しながら、楽しい時間を過ごしています。
 その中で、これまでは週に1回、土曜日だけは
 『喫茶クラブ』という会がありました。喫茶クラブは、昭和50年頃から続いており、「園内であっても、喫茶店的な雰囲気を楽しみながら、皆で和気あいあいと歓談・飲酒をしよう」という目的のものでした。
 お楽しみ会と喫茶クラブ。この二つの会の内容はほとんど同じものですが、少し違うのが喫茶クラブではビールやお酒など飲酒もOKでした。その二つの会を、今後はわかりやすく一つに統合することとなりました。土曜日に限定されている飲酒も、好きな日に飲めるようにとの思いから、ビールやお酒などを利用者自身に買物で購入してもらい、夕食時に晩酌として一杯やって頂こうということになりました。(飲み過ぎの心配もあるので、多少の決まり事もあるのですが・・・)
 30年近く続いた『喫茶クラブ』という名称がなくなるのはちょっとさびしい気持ちもありますが、これからは『お楽しみ会』として、利用者の皆さんが楽しい時間が過ごせるよう努めていきたいと思います。



笑顔と元気な声で!

宮本 妙子

 平成9年より8年6ケ月 勤めさせていただきました。在職中は色々とお世話様になり感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
 花見、運動会、一泊旅行、園まつり等行事を通して共通体験は楽しい思い出となりました。これからは自然と共に心豊かに過ごしていくつもりです。
 愛命園が末永く笑顔と元気な声で満ちあふれていいますようお祈りしています。



よろしくお願いします

管理栄養士 青木 ましず

 この4月より宮本栄養士さんの後任として着任致しました「青木ましず」です。3月まで老人保健施設に勤務しておりましたがご縁あって緑豊かな湯の里、愛命園に勤めさせていただく事となりました。この湯来地区の隣町、旧佐伯町から19.8kmを愛車で水内川を横目に往復しています。
宮本栄養士さんの後をけがさないよう、少しでも近づけるように、入所者の皆さんの体調や食事摂取機能に配慮した給食を提供する栄養管理と感染症予防、生活習慣病予防とケアに努める健康管理を他職種の職員の皆さんと連携して実施して行きたいと思っています。ご支援、ご協力をよろしくお願い致します。
 昭和32年生まれの48歳。歌うこと、おしゃべりすること、笑うこと、食べること大好きな私です。入所者の皆さんと、歌ったり、おしゃべりしたり、笑ったり、食事しながら共に歩んで行きたいと思います。微力ながら前向きに精一杯がんばって参りますので、ご指導をよろしくお願い致します。



花満開であったなら

支援・指導員  新田 嘉弘

 確か、広島のさくらは、3月の下旬に開花宣言が出されたと記憶している。その時は誰もが「愛命園の花見は4月6日じゃが、花は咲いとるよのう」と予想していた。しかし、待てど暮らせど固い蕾は一向に変化せず、おまけになごり雪まで降る始末、結局予定の変更もされないまま、当日を迎えたのである。
 行事立案担当ともなれば事態は深刻、楽しい宴にすべく、空とさくらを眺めながら、弁当や飲み物等に目配りをしながら始まりを待っていた。腹を空かせた連中が集まってくる、わいわいとにぎやかな雰囲気の中で恒例の乾杯、何時もの風景が展開した。予想以上の人達が外で楽しんでくれた。吹き抜ける風に舞う満開の花びらを思い浮かべながら・・・。
 それから一週間が経過した。前日の大雨で心配された花びらも何とか持ち堪え、満開の時を迎えていた。昼食時、食堂の窓越しに見るさくらが何とも恨めしい。思わず弁当と酒を持って外に出たい衝動に駆られていた。入所者、職員それぞれ新年度がスタートしたばかり、どのような一年になるのであろうか。気持ちだけは、明るく優雅に花満開と行きたいものである。



フラワークラブがスタートしました

支援・指導員 長峯 公明

 「冷暖房完備、トイレ・テレビ付き、全室南向き」の快適な居室。でも、一歩ベランダに出れば、ただの通路、いざという場合の避難路でしかありません。お天気が良くて「日向ぼっこでもしようか」という利用者もほとんど見かけませんでした。
 自由時間の過ごし方は、利用者によって様々です。テレビを見たり、音楽CDを聴いたり、ぽつねんと座り込んでいたり。それぞれの自由な過ごし方を尊重しなければいけないとしても、もっと他にも楽しみ方はないのだろうか。そんな思いが「フラワークラブ」の出発点でした。ベランダに自分専用のプランターを並べて花や野菜作りをしよう。幸い、洗濯機も置けるようにと設置していた水道栓もあります。潅水や施肥、何より日々成長する様子を眺め、触り、できれば収穫の喜びも味わいたい。植物栽培の楽しさを実感し、ベランダも生活空間の一部として活用することができればいい、と思いました。

ただ、利用者の大半はそうした経験がなかったためか、「見えない」ということで尻込みしたのか、呼びかけに反応した5名でスタートすることにしました。ベランダでの栽培は居室担当職員の協力も必要なことから、当面は共有の場所で集中管理することに決めました。
昨年10月にマイプランターにイチゴ苗を植付け、日当たりのいいデイルームの外通路に並べました。11月にはメンバー以外の利用者も加わってプランター10個にチューリップの球根を植え、グラウンド脇に並べました。4月も中旬になって、イチゴは花をつけ始め、チューリップも色かたち様々なつぼみが開き始めました。参加利用者の専らの関心は、「いつ頃、イチゴが食べられるか」ということにあるようです。
 今後、9月のススキ配布行事に向け、一緒にお配りする花を作ろうと話し合っています。参加者や活動領域をもっともっと増やしていけたらと願っています。



【寄せられた善意】
[平成18年1月26日〜平成18年4月20日]
(順不同敬称略)

《現  金》 
山手 瑠璃子      青原 清美
波多野八千代      愛命園家族会
愛命園育成会      向井 重美
付添看護共済事業愛命園支部
西本 友則       丸田 義行
明法寺讃美仏教婦人会  明法寺

《現  物》
お菓子       湯来朗読奉仕会
野菜        末田弘明
牡蠣        宮本海産
果物        向井重美
みかん       新庄よしこ
八朔        田島 定
伊予柑       村上芳正
伊予柑       大嶋宏史
広島菜       岡田麻里子
お菓子、飲物他   中野眼科
茹よもぎ      佐々木弘子

人の動き
《退  職》
   3月31日付
栄養士     宮本 妙子

《着  任》
   4月1日付
管理栄養士   青木 ましず



【編集後記】
 いよいよ始まりました、障害者自立支援法。
 まだまだ混乱やわかりづらいところもあるようですが、愛命園の利用者の様子としては、大半の方は、これまでと大きな混乱もなく過ごされているように思います。もちろん「自分が使えるお金はこれくらいだから、節約をしてこれとこれは我慢して・・」といった方もおられます。
 私も先日、認定員研修という研修会に参加させて頂きました。自立支援とはうらはらに、自分でできることが多ければ多い人ほど困ってしまうような仕組み?と感じてしまいましたが・・・。
 なんにせよ障害者の方々がより良い生活を、と成立したはずの法律です。時代が変わっていくというのなら、より良い方向へ変わっていくよう、しっかり見据えていく必要があるのだと思います。 (高橋)