第129号   愛命園だより「あゆみ」   平成17年10月

想定外
園長 竹原 幹

今年の流行語の一つに想定内あるいは想定外と言う言葉が入るのではないでしょうか。愛命園にとってもこの9月の台風14号の災害は想定外でした。
 昨年は台風18号でこれまで経験したことのない29時間の停電がありました。自家発電により水は何とか確保できていたとはいえ、懐中電灯などの電池のストックが充分でないなど、大変不便な思いをしました。
 今年も9月5日非常に大きく勢力の強い台風14号が沖縄から九州に向かって進んでいるニュースを聞いて、自家発電機や公用車の燃料の確保、携帯ラジオや懐中電灯などの電池の確保をして、万が一の停電に備えていました。
 台風14号は非常に強い雨を伴っているとは聞いていましたが、愛命園の園舎を改築する時に50cm地上げをしているので、水害などということは全く無警戒でした。
 ところが、9月6日の午後になってまさに豪雨が降り続き、夜9時にはついに避難勧告が出て、車で5分位の施設に避難することになりました。職員に非常召集をした時には既に道路は通行止めの箇所が多く、近くの職員がかけつけて避難に当たりました。夜9時ともなれば、利用者の半数くらいは既に就寝しており、その人たちを起こしての避難は大変でした。
避難して知ったことは、愛命園の南西を流れる川の堤防がグランドの上流で決壊して、泥水がグランドから一部施設の中に入っていました。まさか堤防が決壊するなどということは全くの想定外でした。
 アメリカのハリケーンもパキスタンの地震も全く想定外の災害が続いており、これだけ続くと災害も想定外とはいえなくなって、想定の規準を我々は代えなければならないのではないかと思う次第です。
 愛命園としてもこの度の災害を教訓として、昨年作成したばかりの防災管理マニュアルを見直して水害に対する体制をより強化したところです。
 災害の規模もこれまで予測できないものとなってきています。また福祉制度も大きく変わろうとしています。この波は私たちがこれまで考えていた以上のものであり、まさに想定外といえるほどの早さと規模です。私たちは想定の範囲を拡大すると共にできるだけ多くの情報を迅速に入手して、大きな変革の波に飲み込まれないよう体制を整えて行かなければと心を新たにしているところです。



一泊旅行に行きました

今年も月初めから月にかけ、利用者の希望をもとに5班に分かれて旅行を行いました。各班の参加者から旅行記を寄せていただきました。



神戸・大阪への旅

 本来の計画では9月9日で実施するはずだったこの旅行ですが、台風の影響で9月29、30日に日程を変更して行いました。一日目は神戸の港クルーズをして有馬温泉に宿泊、二日目は大阪で吉本新喜劇の観劇が主な内容でした。詳しい内容は利用者がリポートしてくれているので別のことを書きます。
 この旅行で特徴的だったのはエスカレーターの使用がとても多かったこと。視覚障害者の誘導にとってエスカレーターの使用は、慣れてしまうと階段を使うよりはるかに楽なものなのですが、今回は一人の介助者が二人の利用者を介助するうえにお互いが不慣れなため最初はかなり苦労しました。愛命園での暮らしでは日常でエスカレーターを使う場面はありません。外出行事でデパートに行ってもエレベーターの方を主に使いがちです。旅行終盤にはスムーズに誘導できるようにはなったのですが、事前に練習する機会があればよかったなと感じました。



吉本新喜劇へ行ったよ

利用者 井上 裕司

 僕たちは例年ですと、もう一泊旅行はすんでいる時期なのに今回は台風の関係で何週間か延びてしまいましたが、どうにか思い出のある旅行となりました。今までは台風が来るか来ないかと呆然と戦っていました。さて、旅行の第一日目は恒例の出発式をやり終えると愛命園のマイクロバスで広島駅に行きました。僕は谷川薫君と長峯さんと一緒でした。行きは新幹線のぞみ50号でした。僕は久々に新幹線へ乗り、懐かしかったです。新神戸駅に着くと丹波バスガイドさんと森脇ドライバーさんたちと会いました。そしてたこつぼ亭でたこ飯の食事をして、神戸港の遊覧船に乗りました。添乗員さんが写真を写してくださいました。船の音は非常にでっかい音で耳ざわりでした。夕方はフルーツフラワーパークで、僕の好きな青くてすっぱいみかんを買ってもらいました。夜の宴会では僕はお酒を飲まないので白めしを2杯食べました。2日目の朝まもなくして吉本新喜劇が盛大に始まりました。とても面白いのでテープかCDをお土産に買ってほしかったけど売ってなくて残念でした。添乗員さんをはじめ運転手さんガイドさん、このたびもいろいろお世話になりました。これから寒くなりますので身体に気をつけてください。(原文かなタイプ )



徳島・淡路島の旅

班では四国・徳島県へ行き、一日目は阿波踊り会館で本場の阿波踊りを体験しました。ステージに出て踊った際、苗岡さん・松永看護師が表彰されました。みんな積極的に参加しリズムに合わせて楽しく踊っていました。二日目にはイングランドの丘へ立ち寄った後、観潮船に乗り間近で大迫力のうず潮を体感しました。絶好のうず潮日和ということで大きなうず潮を眼で、耳で、肌で感じておられました。観潮後は近くの海へ寄り皆で“海の歌”を合唱しました。二日間貴重な体験が出来、皆とても喜んでいました。



一泊旅行3班・4班(山陰・島根)

 1日目は海遊館アクアスへ行きました。弱視の利用者はじっくり魚を観察し楽しみ、音声ガイドを使用して説明を聞き、楽しむ利用者もいました。イルカやアシカショーも耳を傾け、楽しんでいたようです。可愛い魚のぬいぐるみやキーホルダーをお土産に買い、大事にしています。
  2日目は平田観光農園に行きました。朝から雨が降っていましたが、ちょうど雨も上がりぶどう狩りが出来ました。時期的に終わり頃でしたが、甘くておいしいぶどうを堪能していました。



夏祭り

夏祭り企画委員

 8月6日の夏祭りは例年に変わらず地域から多くの人の参加を得て行われた。この日を待ちわびていた利用者も落ち着かぬようで、早くから開始の時間を待っていた。開会の挨拶や乾杯の音頭が終わると、会場は一気ににぎわい笑顔が飛び交った。カラオケを聞きながらビールを流し込む姿も、あれもこれも例年に変わらなかった。しかし今年は特筆に価する多くのチャレンジをした。
 @地域の人との交流を積極的にはかるため利用者と混席にしたこと。
 A例年多くの学生ボランティアを招請していたが、今年はほとんど当園の職員で行ったこと。
 B飲食物の一部(ビール・焼き物)を有料にしたこと。これは無料であるが故に来園者の心を煩わせている(「お祝い金」を持参される)現実に配慮したためであった。そして何より、より夜店感覚に近づけたいとの思いから無理のない料金を設定させて頂いた。
 祭り後半になり重たい空からポツリポツリ小雨が落ちてきたため、盆踊りをやめて花火のフィナーレに移っていった。幸いそれ以上の雨にはならず、「なんとか終わった」と内心胸を撫で下ろしていたのだが、盆踊りの中止を残念がる利用者の声が聞かれた。
 「申し訳なかったなあ」でも「終わったから・・・まあいいか」
 醒めた微妙に揺れる気持ちを胸におさめて行事を終えた。



夜無谷川がきれいになりました

 園の敷地に沿って流れる夜無谷川(よなしだにがわ)はホタルの生息地として知られ、上流にある「たらたらの滝」は湯来の観光名所のひとつでもあります。しかし、住宅地域を流れる川の宿命なのか、一面に空き缶やビニール袋などの生活ごみが絶えません。「身近な川を大切にしたい」との願いから、愛命園では毎年、ホタルの飛翔が終わった時期に川掃除の行事を続けてきました。
 今年も8月初め、利用者と職員、学生ボランティアも交えて、一日、心地良い汗を流しました。生い茂った葦や雑草を鎌で刈り取って、根元にからんだビニール袋を取り除き、川底に沈んだ空き瓶、空き缶などを回収しました。よどんだ流れが勢いを取り戻し、泥土を押し流していくのに嬉しくなりました。下流部は地元の方のご協力もいただいて、昨年と同様の範囲の清掃を終えることができました。
 ただ、川に入ってみると水の通りが細い所では50センチほどしかなく、年々、土砂が堆積して川床が上っている状況が改めて確認されました。先の台風では水位がセメント護岸を越え、土盛り部分にまで達していました。敷地の南北を川に挟まれた地形とあって、夜無谷川が氾濫すれば避難路を奪われることにもなります。溜まった土砂を浚渫するなど、抜本的な対策が求められていると思いました。それは行政にお任せするしかないとしても、きれいな夜無谷川を守るために、今後とも私たちにできることを続けていきたいと願っています。



ススキ配布

 今年も、毎年行っているススキの配布を行いました。配布したススキは前日の9月1日(木)に利用者と職員が湯来町にある天上山に出かけ刈り取ったものです。毎年ススキの取れる場所が少なくなったと言いながらも今年も去年と同様に7500本のススキを採取することができました。採取されたススキは職員と利用者の家族によって長さなど揃えられ、八丁堀福屋前・関係官庁等にお配りしました。福屋前の配布では、福屋の改装と関係し去年とは少し配布場所を移動し、利用者の手から市民の方々に配られ本当にあっという間に配布を終了することができました。
 これからも市民の方々に少しでも愛命園の事を知って頂き利用者との交流の場となればと思います。 ススキ配布終了後、沢山のお礼の手紙を頂いたので一部紹介したいと思います。

『 先日は思いがけなく、薄と花のプレゼントを頂きありがとうございました。うれしくて、さっそく花瓶に挿して眺めています。豊かな自然を頂いて心やさしい気持ちになりました。湯来の自然の中で心豊かに毎日を大切に過ごして居られる皆様お体だけは充分気をつけて頑張ってください。来年もお逢い出来たらとたのしみにしています。本当に有難うございました。』



【寄せられた善意】
[平成17年7月26日〜平成17年10月25日]
(順不同敬称略)

【現 金】
上原 利枝     石井 一憲
丸田 義行     佐伯 森人
安村 知子     青原 清美
尾崎 重実     愛命園神楽クラブ
(夏祭り)
前川 昭夫     永尾 博雄
佐々木博巳     岡田麻里子
(夜神楽)
上野 好子     砂本 道江
(ススキ配布)
長沼 治子
(水害見舞)
八洲管理梶@    中本建設
中島 正子     どんぐり会

【現 物】
坂口クリーニング 新米
藤本カツコ     冬瓜
向井 重美     なし・りんご・みかん
田中フミコ      さつまいも
田島 定       みかん
谷塚 一子     冬瓜
竹原 幹       ステージ一式(組み立て式)

【朗読ボランティア】
どんぐり会
湯来朗読サークル



人の動き

《入 院》
佐伯 正好
8月25日より広島総合病院に入院
療養中です。



【編集後記】
秋ですね。毎年この時期のあゆみは、行事報告でいっぱいになります。夏まつりにすすき配布、一泊旅行など・・・本当なら運動会の報告もあるはずだったのですが・・・昨年に続いて今年も雨で中止になってしまいました。なんとか雨男の名を返上したいところだったのですが、非常に残念。ご参加頂く予定でした皆様には、大変申し訳なく思います。11月には園まつりがあります。晴天を願うとともに、皆さんのご来園をお待ちしています。